Vol.10「黒のエチュード」はこちら。
古い邸宅にしのびよるカメラ。灯りを落とした温室があり、邪悪な妖気を感じさせる……さすが、「刑事コロンボ」はユニバーサル制作だけに、恐怖映画の手法はお手の物だ。
今回の犯人はこの温室で蘭を栽培する男(レイ・ミランド再登場)。莫大な遺産を受け継いだ甥(ブラッドフォード・デイルマン……吹替は山田康雄です)を、財産目当てに殺害する。
妻の浮気に悩む甥っ子は、父親から信託財産の形で遺産を相続しており、“緊急時”にしか大金を手にすることができない。そのため、妻の浮気相手に手切れ金を用立てようと叔父の偽装誘拐の計画にのってしまう。「パイルD-3の壁」の回でもこのパターンだったし、信託財産ってむしろ犯罪の温床なのでは?
運転席に拳銃を発射し(第一の銃弾)、その車を崖から転落させて甥っ子が誘拐されたように装ったあと、叔父は用済みとばかりに甥を射殺する(第二の銃弾)。
コロンボが犯罪を立証するのは第三の銃弾の存在によってだけれど、ここはもうひとひねりあってもよかったところだ。むしろこの回は、部下として登場するエリート刑事とのかけ合いを楽しむべきだろう。捜査のために暗視カメラを持ち出した部下にコロンボは
「自腹で買ったのかい?」
「は。任務に万全を期したいと考えまして。」
「……お前さん、ひとりもんだろ。」
車の転落した現場では
「ガイ者の他に二名いたことが明瞭です!」
「……明瞭すぎるね。」さすが、名刑事である。
結果的に巨額の財産は浮気性の妻(サンドラ・スミス……かなりセクシーです)に遺される。そんな彼女を、コロンボは決して道徳では裁かない。しかし、このずる賢い天使は最後にちょっとしたいたずらを彼女にしかけるのだ。やるなあ。
Vol.12「アリバイのダイヤル」につづく。
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