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ダウンタウンの市場を駆ける優作。追うマイケル・ダグラス。吊された食肉(死の象徴)の間をすり抜け、逆襲する優作をチャーリーの助けもあってなんとか逮捕。不意打ちのアクションと、無言の殺人者という設定がとにかくすばらしい。ビニール越しに襲い来る画は、もちろんヒッチコックの「サイコ」を意識したことだろう。
わたしたちはもう知っている。この魅力的な殺人者が、すでに癌に冒されていることを。製作者のシェリー・ランシングはこう語っている。
「彼(松田優作)は、癌であることを一種の恥だと考えていたのかもしれない。だから誰にもそのことを知らせなかった」
契約社会であるアメリカにおいて、癌患者であることがキャスティングに影響したかはよくわからない。
すでに「ラストサムライ」特集でお伝えしたように、この佐藤役にはそうそうたる面々が立候補しており、萩原健一、根津甚八、小林薫を押しのけてゲットした以上、癌程度のことでこの役を失ってたまるかという気持ちは確かにあったのかもしれない。
治療に専念してほしかったのが正直なところだが、しかし彼の入魂の演技が、この作品をとてつもない高みに位置づけたのも確かだ。
逮捕された佐藤は
「英語どころか日本語もしゃべらないぞ」
と手を焼かせる。そこへ、日本の大使館職員が現れ、本国へ送還されることになる。
「おれのヤマ(事件)だ!」
と激昂するニック。しかし上役は冷静に
「ほとぼりがさめるまでゲイシャと遊んでこい」
と、日本に佐藤を送り届ける任務を命ずる。温情ではあるけれど、この上役はニックを完全に信頼しているわけではない。以下次号。
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