事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

青山文平でいこうPART7 「鬼はもとより」徳間書店

2017-10-09 | 本と雑誌

PART6「約定」はこちら

藩札(はんさつ)、のお話。経済記者出身の青山文平得意の分野だろう。藩札というのは、基本的にその藩内のみで通用する紙幣。どれだけ発行するかで経済をコントロールする目的と、窮乏したためにしかたなく、という側面もあったらしい。

主人公は浪人。万年青(おもと)の栽培で生計を立てているのは表向き。実際には藩札制度のコンサルタントのような仕事がメイン。

彼は出身の小藩で藩札掛としてつとめ、藩の経済の立て直しに成功した。しかし、家老から実態からかけ離れた多量の藩札を刷るように命ぜられ、拒否して藩札の版木を持って出奔した過去があった。経済官僚としての誇りが許さなかったわけだ。どこかの中央銀行のように、政権のリクエストにお応えして異次元緩和を行うなどとんでもないと。

彼はある藩から依頼を受け、藩札の発行について指南する。依頼したのは若き家老。自分は鬼になっても藩経済を立て直さねばとの使命感をもった人物だった。このふたりの奮闘が基本線。はたして藩の行く末は、そして“鬼”はどうなったか。

経済小説の読者の多くは経営者やサラリーマン。生き方指南をこのジャンルに求めている人も多い。読み方として邪道だとは思うけれど(笑)、これこそ多くの経済人たちに読んでほしい作品。

PART8「かけおちる」につづく

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