事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「小さいおうち」 (2014 松竹)

2014-01-30 | 邦画

Chiisaiouchiimg01 原作はミステリ的色彩が濃いものだった。それは……

・主人公である山形出身の女中、タキの自叙伝が“信用できない語り手”によるものだったこと。

・最初の主人によって、良い女中のとるべき行動のヒントが伏線として語られていること。

・タキの行動は、一貫して“ある事情”によるもの。その事情こそがミステリとしてのキモ。

山田洋次がミステリを監督するとなれば、あの「霧の旗」以来ということになる。でも最初にこの企画を聞いたときは驚いた。だって山田洋次が○○愛の映画を撮る?倍賞千恵子、吉岡秀隆といったいつもの山田ファミリー(というより寅さん一家)でそれは無理だろう、と思ったので。

しかしそこにこそ山田が映画化を熱望した理由があったのかもしれない。おれにだって成瀬や小津のように、端正なキャストで露骨な描写なしに艶めかしい物語を紡ぐことはできると。

それが成功したかは微妙なところだけれど、若奥様(松たか子)とタキ(黒木華……これほど割烹着が似合う女優もめずらしい)の脚を中心に、子どもをマッサージする手、和服を身に着ける所作(松たか子はさすがですねえ!)などで画面に艶を出そうとしている意図は伝わる。

「この戦争は、終わるんでしょうか」

「始まったものは、いつかは終わるのよ」

そのとおりに、若奥様の儚い不倫は終わりを迎える。そして戦争も。しかしタミの悔恨の日々だけが終わらなかったエンディングは、もっとシンプルに描いた方が感動は深かったはず。

まあ、わかりやすいことが身上の監督だから、現政権への皮肉もあからさま。

「やさしい言葉で、勇ましいことを言うやつがのさばる。いやな世の中だ」

現代が戦前と似た状況にあることを強く主張している。そこをもうちょっと寸止めで語っていただけると……82才の巨匠に、いまさらそんなリクエストはよけいなことでしょうが。

Chiisaiouchiimg02_2

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8 コメント

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まちキネは本作と「永遠の0」のヒットで賑わってま... (ぱたた)
2014-01-31 10:17:31
まちキネは本作と「永遠の0」のヒットで賑わってます。
私も近々鑑賞しますが、本作で“庄内弁”が出るとか?
“庄内弁”だと藤沢周平3部作も思い出しますね。
山田洋次監督の珍しい題材、鑑賞が楽しみです。
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そうやってモチベーションあげられると (hori109)
2014-01-31 22:17:43
そうやってモチベーションあげられると
しんどいかも。
庄内人はコメディリリーフにしかすぎないので(T_T)
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深読みですねえ。 (sakurai)
2014-02-07 16:36:16
深読みですねえ。
山田監督、もったいぶってますが、そんなに深くは考えてないような気もします。
いつもの山田節の妙な配役で来るのかな~と思ったら、どんぴしゃりでしたね。
ここは、感心しました。
でもって、いいじゃないですか。
私、今まで見た山田監督作品の中では、もしかしたら一番かもです。

松金さんは、ほんとにうまかったです。
庄内弁のニュアンスって、難しいんですよね。庄内に行って50年以上の私の父親は、いまだに修得出来てないです。
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いつもの山田節の妙な配役(笑) (hori109)
2014-02-07 22:13:36
いつもの山田節の妙な配役(笑)
これが最高作ってのはさすがに首肯できないなあ。
わたしは「寅次郎夕焼け小焼け」かな。
フランス映画っぽいのね意外に。
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実は私、寅さん、一本も見てません。。。 (sakurai)
2014-02-08 08:54:53
実は私、寅さん、一本も見てません。。。
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驚愕……。 (hori109)
2014-02-08 15:31:29
驚愕……。
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実は私も一つも見たことがない… (中等遊民)
2014-02-08 18:36:58
実は私も一つも見たことがない…
それどころか、日曜8時の大河ドラマも一度も(45分間)見たことがありません。
だからほとんどの話についていけてないという…


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驚愕PARTⅡ…… (hori109)
2014-02-08 23:15:06
驚愕PARTⅡ……
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