事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「ブラック・スワン」 Black Swan (2010 FOXサーチライト)

2011-05-15 | 洋画

Blackswanmovieposter1 およそクラシックバレエほど縁遠い世界もない。あのチュチュがまずわからないし、つま先立ちであれだけくるくる回れるってことは、トウシューズにはなにか秘密があるに違いない、くらいの認識。だから頭の中では少女マンガにおける

・プリマをめぐる女同士の陰湿な争い

・美貌のダンサー(きっとゲイ)の壮絶な取り合い

的な世界なんだろうと偏見ありあり。「ブラック・スワン」は、確かにそんな展開なんだけど、トウシューズのなかに画鋲を入れる程度の少女マンガ的悪意を鼻で笑うような狂気が支配する。

ストーリーは徹底して「白鳥の湖」をトレース。白鳥に姿を変えられた姫が、同じ姿をした黒鳥に王子の愛をうばわれ、その解決策として……そんなお話だってことも知らなかったですけれど。

ナタリー・ポートマンが演じるニナは、技術において完璧を求めるあまり、奔放さに欠けると監督(ヴァンサン・カッセル)に喝破される。他のバレリーナは陰で「不感症の小娘」と呼んでいるぐらい。彼女を産むためにキャリアを捨てた母親(なんとバーバラ・ハーシー)に私生活をコントロールされていて、ニナは不満をつのらせる。

バレエ団には「完璧」なプリマがいたが、「白鳥の湖」公演を前に引退を強いられる。「死にゆく白鳥」である彼女を演じたのはウィノナ・ライダー。新しいプリマにポートマンが選ばれるが、彼女は王子を誘惑するブラック・スワンを演じる自信がない……

ここからサイコスリラーとして突っ走るんだけど、ある事情があってナタリー・ポートマンは出ずっぱり。気弱なホワイト・スワンが瞬時に邪悪なブラック・スワンに変貌するあたり、みごとに演じています。

っていうか、乳首を出さないだけで、他のありとあらゆる濡れ場を用意してあるのでR-15は当然かな。観客をひっかける罠はたくさん用意してあるんだけど、ニナの歯車がどの時点で狂い始めるかは、母親が描いた絵をよーく見ているとわかりますよ。

バレエを接写するものだから、チュチュの衣擦れの音、舞い飛ぶ羽毛があいまって息苦しいほど。つくづく思います。娘にバレエを習わせなくてよかったー。

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5 コメント

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私もバレエにはさっぱり縁がないのですが、見るの... (sakurai)
2011-05-15 20:25:37
私もバレエにはさっぱり縁がないのですが、見るのは好き!
バレエの映画もいっぱい見てきました。なもんで、ちょっと想像していたのとは違ってましたね。
違和感を感じたのは、黒鳥こそプリマが一番踊りやすい、踊りたいキャラクターと言う認識だったので、ちょっと違うんじゃいないの、と。
自信がないってのは、なしでしょう。どんだけ自分が練習を積み重ねてきたか!その積み重ねこそが自信の裏打ちで、ないはずがない!と感じるのでした。
と、考えるとこれは母と娘のひたすら愛憎の物語。
愛と束縛の境目がわからなくなり、保護と支配があいまいになってしまった親子の悲劇。その呪縛が解き放たれた彼女は、幸せだったかのかもですね。
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早くも三川で観られたようですね。 (ぱたた)
2011-05-16 14:11:23
早くも三川で観られたようですね。
まちキネでも予告流してたので2nd上映で鑑賞予定です。
5/21、/22の1周年祭にも是非!
私がオープン時TVインタビュー受けてもう1年ですよ、早いなぁ。
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sakuraiさんへ。 (hori109)
2011-05-16 17:01:57
sakuraiさんへ。
ラストのセリフは確かに気がきいてましたけど、それにつなげる
工夫が今一歩。
どうしたってホワイトスワンがニナで、ブラックスワンがあの奔放なダンサー
って図式にもっていかなければならなかったので、しょうがないんじゃないかな。

で、中年男にとっては、ブラックスワンに豹変してからのナタリーの方が
はるかに魅力的だったんですよ。
ああこういうことだから女性運が(T_T)
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ぱたたさん、まちキネのラインナップから「ブラッ... (hori109)
2011-05-16 17:04:59
ぱたたさん、まちキネのラインナップから「ブラック・スワン」
消えてるよー。
どんな事情があったんだか。
でもまあ、「トゥルー・グリット」と「英国王のスピーチ」が
あるからいいですけどね。
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歴然とハッピーエンドだよねあれは。 (hori109)
2011-05-22 07:53:44
歴然とハッピーエンドだよねあれは。
死にゆく白鳥のベッドの前で見せる、一種の無礼さ
を考えても、あのままだと自分だけでなく
あらゆるものを破壊していただろうし。
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