事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「エロス+虐殺」(1970 ATG)

2018-09-25 | 邦画

菊とギロチン」につづいて今年二本目のアナーキストを描いた映画。タイトルがきちんと対応していますね。「菊~」が瀬々敬久作品らしくエモーショナルだったのにくらべ、こちらは吉田喜重監督らしく、そして1969年に撮られた映画らしく、徹底したディスカッションドラマになっている。

つくりは二層になっていて、のちに関東大震災後の戒厳令下に、甘粕大尉によって絞殺された大杉栄と伊藤野枝の大正五年のパートと、人生に目的を得られずに享楽的な生活を送る若者たちの1969年に分かれ、数十年たって、恋愛が自由なものとなっても、しかし生きていくのは不自由であることに変わりはないと主張……しているのかしら。確信なし。

妻、愛人、新しい愛人の三人の女に、平等に愛を与えると豪語する大杉栄。演ずるのは細川俊之。美貌と美声で女たちを翻弄する。

伊藤野枝を演じたのは監督夫人でもある岡田茉莉子。すでに大女優の貫禄なので、若さにまかせて夫と子どもを捨てて大杉に走る設定は少しきつかったかも。

その点、大杉に経済的援助を与えてきた女性記者(のちに社会党から衆議院議員を5期つとめた神近市子がモデル)をきつい顔で演じた楠侑子という女優が激しく魅力的。

わたし、こういうタイプに弱いんだよな……どんな人なんだろう……えええええっ、別役実の奥さんなのっ!ということはあのわたしが大ファンであるべつやくれいのお母さん?母娘ともに素晴らしい容姿。まあ、わたしの女性の趣味は変わっているらしいのであまり大声では言えませんが。

現代のパートと大正はうっすらと重なってはいるんだけど、原田大二郎のいかにも虚無的なおしゃべりはやはり時代というものかしら。

それが映画というメディアを、日本映画という存在を芸術的にイノベートした(それはだれも否定できないはずだ)ATG(アートシアターギルド)の映画というものかしら。

でもロングバージョンの216分を一気に見せる強さはあるんだよな。それが、あの時代の強さでもあるんでしょう。

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