事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「耳部長」 ナンシー関

2007-09-16 | 本と雑誌

Mimibutyou ナンシー関が亡くなってからもう何年だ。
彼女の正当な評価はまだ確立されていないような気がする。
定点観測を行う、その定点自体がどこかへ吹っ飛んでしまったような。失って初めてわかる彼女の真っ当さ。昔のネタを仕込んでみます。

 前から思っていたのだが、日本の芸能ジャーナリズムの貧困さは我慢できるものではない。極端な例を出すようだが、あの野村沙知代と浅香光代のバトルの頃は、他にいくらでもやるネタあるだろが!とほとほと呆れていた。いい年したババアをつかまえてなーにがミッチー、サッチーだよ、けっ!という具合。

 シネコン拡大路線を突っ走るマイカルグループのリストラは映画界にどう影響するかとか、今度の東宝ゴジラの監督にガメラ三部作の金子修介が遂に選ばれたとか(ちょっとマイナー過ぎるか)、喜多郎のグラミー受賞とか(確か山口組の先代の娘と結婚したりしたからまずいのかなあ)、どうしてもっととり上げないのだろう。

 スキャンダルを追いかけるな、と言っているのではない。私生活を晒すことで生きている(他に生きる術を持たない)タレントはいくらでもいるし(見るだけでも不快な美川某とか神田某とか)、用もないのにやたらにパーティ会場へ現れては愚にもつかないコメントを発していく彼らを取材することは、ゴシップの需要がこの国には確実に存在するらしいから、全部やめてしまえと言っているわけではないのだ(近頃唯一笑ったのは、篠原ともえの台湾泥酔乱痴気前歯ポロリ事件だった。がんばれよーシノハラ、酒はともかくクスリはやめとけよー)。ただ、バーニングだのジャニーズといった大プロダクションに守られていないタレントばかり喰いモノにしたり、まるでタレントの取り巻きのようなリポーターの、ひたすら下衆なインタビューは何とかならないかと願っているのである。

 とりあえずビッグカップルと認めてやってもいい(何様だオレ)松嶋菜々子と反町隆史の結婚報道にしたって、スクープとは名ばかりで、実は二人の所属するプロダクション同士の暗闘の結果リークされたものだったらしいし、だいたい記者会見でのリポーターの質問が「その指輪、おいくらだったんですか?」はいくら何でもないだろう。恥ずかしくないのかなしかし。

Fun061202  芸能レポーターが芸能人の男女交際のネタを追及するのは、すなわち「やってるか、やってないか」を明らかにすることなのである。「いちばん大切な人ということですか」「結婚を前提としたおつきあいということなんですか」「ご両親へは紹介なさったんですか」などの体裁のいい決まり文句は、すべて「やったんですか」に直訳することができる。しかし、それに対する答は、そんな下品な直訳の存在などつゆも知らないという、これまた妙なツラの皮の厚さで、「ええ、いちばん大切な人です(いちばん大切な人つっただけで、やったとは言ってないからな)」と返される。下品な言葉はひとつも出てこないけど、たいへん下品なやりとりなわけである。

……これはナンシー関が池谷幸雄の不倫報道について書いた時のものだが、この突っ込みは鋭い。鋭すぎる。ブラウン管を通して見ることで(つまり何らかの演出、作為を嗅ぎ取ることで)、彼女は芸能界とそれを取り巻くメディアについてこれ以上はないくらいの卓見を吐く。鼻で笑ってみせる、というか。こちらの目からはウロコがバランバラン落ちるわけだ(次号につづく)

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