なんていかにも五十年前の作品らしいセリフがあったかと思えば、
「ダメね、(恋愛という舞台から)引退した人は」
なんて岸田今日子のソリッドなセリフもある。和田夏十の才気が爆発した脚本。
設定としてはノンシャランなTVプロデューサー(当時、この職業は映画界にとって微妙な部分だったはずだ)である船越英二をめぐる「十人の怒れる女」だけれど、それ以上に切れ味するどい都会劇の性格が。だからシャレにならない行動に走る某登場人物にたいするあつかいはとても冷たい。
ほんとにこれ、五十年前の作品なのかと絶句。シブヤ系の方々が驚いたのも無理はない。
一度腰を落としてからステップを踏む船越の軽さと、十人の女性たちの名がすべて数字になっていたりするお遊び(めぞん一刻ですか)がなんともいい。
女優たちの脚なめで船越を何度も撮ったり、市川崑も鋭いところを見せている。本妻(山本富士子)ってやっぱり強いんだな……と思わせて最初の愛人(岸恵子)との逆転劇があったり、不条理なラストをもってきたり、市川夫婦がめざしたものは、意外やヌーベルバーグだったみたいだ。
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