事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「のぼうの城」(2012 東宝=アスミックエース)

2012-11-07 | 邦画

Floatingcastleimg01 ブームになった原作は、キャッチフレーズの

「この男の奇策、とんでもないっ!」

に反して、意外にストレートな小説だったし、スカッとしたエンディングを迎えるわけでもない。ブームを仕掛けた誰かさんがうまかったのだろう。史実をもとにした作品である以上、それは仕方のないことだ。

むしろこの映画で描かれた攻防戦ののちに、主人公の成田長親がどう生きたか、どう出処進退したかの評価こそ、ほんとうのでくのぼうか天才かの分かれ目だろうと思う。

そんな微妙な人物を描くにおいて、野村萬斎ほどの適役は考えられず、というか彼の出演の内諾があったために映画化が現実のものになったという話はとても納得できる。田楽舞がどうのという前に、作品自体が成り立たないだろう。

思えば野村萬斎は、「あぐり」のエイスケさんにしても「陰陽師」にしても、邪悪な表情と善なる行動(疑問もあるけど)のギャップに魅力があった。こんな謎めいた役者は他にいないので、本業も忙しいだろうけれどももっと映画に出てほしいなあ。なにしろ彼が出ているときと出ていないときでは画面の温度が違いますもん。

他には、まさかの鈴木保奈美が年齢を重ねてむしろ魅力を増すタイプだったのはうれしい。山田孝之は、いくさを知っているだけに長親のありように驚く評論家体質の武将(笑)を演じてさすが。

ところが、どうも他のキャストがふるわない。いつものように絶叫芝居で場を白けさせる中尾明慶はわたしだけが苦手なのか?

成宮寛貴と平岳大という、萬斎と同じようなアヒルグチの男優をそろえたのは何か意味があったのか(外国人は絶対に区別つかないと思う)。

お姫様役の榮倉奈々は完全にミスキャストで、もっときつい顔の女優を選ぶべきだった。あ、だから隣にいる鈴木保奈美が輝いて見えたのかしら。映画もすっきりしない出来だったのはキャスティングのせい?

水攻めのシーンのために、一年間公開延期になっても(金利だけでもたいへんだったろう)大ヒットしているようなのはめでたい。わたしですら、去年あれを見せられたらちょっとしんどかったろうと思う。延期はやむなしだったかな。

コメント (2)
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