「ロボジー」につづいてなりすまし映画。鶴岡まちなかキネマの駐車場は満杯。「三丁目の夕日」人気だろう。けっこうなことだ。
まあ、その分このミステリ映画(ともちょっと違う)「ミケランジェロの暗号」のお客さんはちょぼちょぼ、ってとこでしたけどね。
脚本はかなり皮肉がきいている。
ドイツのポーランド侵攻以前、まだナチの影響があまり及んでいなかったオーストリア。ユダヤ人の画商一族カウフマン家は、ミケランジェロがモーゼを描いた絵を手に入れる。息子のビクトルは、絵の隠し場所を使用人の息子で家族同然に育ったルディに教える。しかしルディは密かにナチに傾斜しており、絵のありかを密告し、その結果カウフマン一家は別々の収容所に送られてしまう。
イタリアとの交渉にその絵を使う腹づもりのナチだったが、贋作であることが判明。本物の所在を知る父親はすでに死亡している。オリジナルを探すためにルディがビクトルを収容所から出し、ベルリンに飛行機で移送する途中、パルチザンに撃墜されてしまう。負傷したルディをビクトルは渋々助けるが……
原題は「最高の敵」を意味する。
ユダヤ人であるビクトルは、最高の敵ルディの軍服を着ることでSSになりすます。しかし、ナチであることが必ずしも有利とはかぎらない二転三転がうまい。
まるで舞台劇のように密閉された空間で立場が逆転しつづけるので、さぞや息づまる展開だと思うでしょう?ましてや背景にはホロコーストがあるんだし。ところが、どこかユーモラスなストーリーなので意外。
「ユダヤ人を見分けるのは簡単だ。ズボンを下げてみろ」
「え、オレのですか」
「ばか、ユダヤ人のだ」
どこのコントですか(笑)。つまりユダヤ人は割礼をしているから歴然だと。このピンチをどう切り抜けるのかも爆笑できます。
“暗号”にもうひとひねりあるとうれしかったんだけれど、まあここまで面白くしてくれたのだから文句は言うまい。わたしの世代にとっては「悲愁」や「ブラックサンデー」のマルト・ケラーの美貌が健在なのを知らせてくれただけでありがたいことだし。