事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「カールじいさんの空飛ぶ家」Up (2009 ピクサー)

2010-01-05 | アニメ・コミック・ゲーム

Upmovie 冒険好きな少年と少女だったカールとエリーは夢を語りながら成長し、19歳で結婚。幼い日の思い出がつまった廃屋を買い取り居心地のいい我が家に改築する。喜びも悲しみも分かち合い、つつましく生きてきた2人にも、やがて悲しい別れが訪れる。ひとり残され偏屈な老人となったカールは78歳で一世一代の冒険に旅立つ。無数の風船と共に大切な家ごと飛び立ったカールが目指すのは、かつてエリーと夢見た冒険の地だった。

……開巻、冒険家のニュースフィルムに心躍らせる少年カールが描かれる。まぁるい童顔で、愛くるしく、そして引っ込み思案な少年。そんなカールは、同じように冒険好きな少女と出会う。まだ乳歯が抜けたばかりのおてんばな少女エリー。

「あんた、あんまりしゃべらないのね……気に入ったわ」

ここからシーンは目まぐるしく変わる。

→二人の結婚(式の列席者の表情で、みんなに祝福されていたわけではないことがわかる)

→子どもを待ち望むふたり

→子どもができないことで落ち込むエリー

→夢だった南米へのチケットを購入するカール

→身体をこわしてしまい、寝込むエリー

→ひとり残され、老人となったカール

……ここまででわずか十分ほど。観客の子どもたちには悪いが、中年としては既に涙ボロボロである。

 そして、近代化の波のために家を引き払うことになったカールは、商売道具だった風船を使って家ごと空に旅立つ。東洋系の少年を心ならずも引きつれて。

 間違いなくピクサーの最高作。これまで何度も言ってきたのでくどいようだが、ピクサーの最大の特徴は脚本を練りに練ることだ。今回もおみごと。序盤に出てくる小道具が最後にみんな機能する。

・妻にもらった冒険クラブのバッヂ

・近所が工事現場になったために埃を払うブロアー

・カールが足が弱くなったために使っていた歩行器(そしてその脚についているボール)

……そしてそして、妻が書き残した冒険日記が泣かせるのだ。

南米への夢を語りながら、しかし平凡な、なんてことないカールとの日常こそが大冒険であり、だからわたしが死んだら“新しい冒険”に出てね、と感謝のことばが……ああああ今思い出しても泣けてくる。

 ここまでくればあとはカールの大アクション大会。あんた腰が痛いんじゃなかったのかね?と無用なつっこみを入れたくなるほどのみごとな空中バトル。CGでしか描けないものが、人間の老いと、同時に老人の輝きであることも確信させた傑作。必見!必見必見!

コメント (5)
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