一昨年58歳で亡くなった、山本文緒の遺書のような日記。
家族のがんにまつわるエッセイは「月夜の森の梟」などいくつか読んだけれど、いやあ、これは、就寝前に寝床で読むと寝られなくなり、胃痛で鬱になりかけ、1/3で閉じてしまい、それでも返却日に奮起して、午前中の明るいときに寝床(本は寝床でしか読めない)で読了。
親しい友人もすい臓がんで亡くなったこともあって、読み始めは涙が滲んで進まない。
「2021年4月私は突然膵臓がんと診断され、そのときステージは4bだった。
何もしなければ余命4ヶ月、抗がん剤やっても6ヶ月。
1回の抗がん剤が死ぬほど苦しくて、あとは緩和ケア。
うまく死ねますようにと。
夫が可哀想でつらいと。
未来がないので、昨日今日明日だけ見つめるという技は高僧か職人さんしかできない技だと。
ジタバタはしないが、簡単に割り切れるかボケ!と神様に言いたい」
たくさんの鞄、ブランドの高価なバッグもゴミ袋へ。東京の仕事場のマンション(軽井沢暮らし)も車も処分。
発熱、痛み、吐き気、倦怠にもがく逃病記。
それでも、後半に緩和ケアのことなどわかりやすく書いてあったりして。作家は書かずにはいられないんだろうか。
山本文緒は結局6ヶ月を生き切った。
友だちも愛車のスカイラインを売って4ヶ月で逝ってしまった。
人は誰でも一人で生まれて一人で死んでいくんだけど、やっぱり平均寿命くらいまでは生きていたい。