『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  696

2016-01-18 09:49:12 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 古代であるこの時代、『経済』という名のカオスが混とんとしている。そのモヤッとしているクラウド状態の中において、貨幣と呼ばれる小さな金属の塊りが核になろうとしている、この時代にいたるまで、石や土をこねて焼いた陶片も核となろうとしたが、その志を為しえなかった。物々交換という原始形態経済を人類思考でもって、このカオスの核とはなりえないとして捨て置かれ、時を経て過ぎていく、しかし、この原始的な取引のカタチが『バーター取引き』というカタチで後世に引き継がれていく。
 『経済』というカオスは、貨幣と呼ばれる小さな金属の塊り、それも金という金属が金以外の金属を押しのけて、ヒトと呼ばれる生き物が生きている地球という名の星を覆い、核として、事を為していくのである。
 この時代のギリシアといえば、テッサリア地方を除いて平野と呼べる地勢の少ない岩と山の国土である。その国土に500余りの都市国家が存在していたのである。日本の戦国時代の群雄割拠どころではない。その都市国家間の物流に物々交換に代わる取引形態が必要となったであろうと想像される。そこに貨幣による決済形態を生み出す土壌があったのである。この時代に使われた貨幣は、スパルタ地方では鉄貨が使われ、その他の地方では、金貨、銀貨、青銅貨が使用されていたといわれている。通貨が確立していない都市国家では、他の都市国家との交易に関しては、通貨が確立している都市国家の貨幣を使用したらしい。
 このカオスの核は、エネルギーを単位として有している。多数が集まって集合体となって事を為していく。数多い種類の核で『経済』を形成していった。人類という生き物は、この『経済』を運用する、法やルールを作り、制度を作り、発展させ、制御して、後世へと進展していく。
 この『経済』は、いま、カオス的な一部を有してはいるが、カオスではなくなりつつある。その核となった貨幣なる小さな金の塊りについて、一筆解説する。
 この時代の貨幣制度は秤量貨幣制度であった。フリー百科のウイキぺデイアの述べるところではこのように言っている。
 秤量貨幣とは、使用に際して交換価値を品位、量目を検査して計って用いる貨幣。長期間の使用や所有、保管でも変化しにくい金、銀、青銅などを加工もしくは加工せずに用いた例が多く、貨幣の最古の形態の一つである。鋳造精錬した貴金属は打刻したナゲット状のものや、中でも金は価値の保存に優れるため砂金のままでも流通した。これに対して、一定の品位、量目の保証のもと、その枚数によって交換価値を計る貨幣を計数貨幣と呼ぶ。品位の安定に不安を生じやすい欠点があるとされている。(ウイキぺデイアより)
 この時代の貨幣制度は、秤量貨幣制度と金属貨幣制度の両建てである。ギリシアにおける貨幣単位は、『ドラクマ』と呼称されたいた。  明日に続く。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  695

2016-01-16 05:46:12 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『次いで、工房の者たちに聞く。新しい堅パンの構想をまとめたかな?』
 『はい、まとめました。棟梁、これが試しに焼きあげた堅パンです。見てください』
 『おう、これは、いい!グッドだ。この大きさ、姿カタチもいい。これなら、お客に対しても求めやすい、量目設定と価格設定ができる。お前らよくやった。明日、セレストスに相談して包装容器について考えることだ』
 一拍の間を取って一同を見まわした。
 新しく見本に焼かれた堅パンは、手に乗るサイズで肉厚は1センチくらいの小判型であった。
 『中に入れる堅パンの量、価格設定、お客が出した手をひっこめないように検討して作ってみてくれ。これまでに作った。堅パンの製造は打ち切る。以上だ』
 オロンテスは、テカリオンに納めた堅パンと同じ堅パンの製造をしたくはなかった。
 彼らの検討、話し合いは終わった。彼はセレストスに声をかけた。
 『おう、セレストス、明日の準備はぬかりなくできているな。明後日だが、キドニアで試乗会を催行することになっている。堅パンをお客様に渡そうと思う。15枚くらい入れた袋詰めを10個作っておいてほしい』
 『了解しました』
 オロンテスは、明日、明後日の手配指示を終えた。
 
 彼ら一族の事業部門の一切がゆだねられているパリヌルスら三人は、知恵と力、そして、技を駆使して、責任担当する業務に真剣に取り組んでいる。
 彼らはクレタ島の一隅に住を営み、コミュニテイを形成して、地に根を下ろすか、下ろすまいか、そのことについて、三人の気が付かないところで、そのことに気づかないまま迷い思案されていた。
 アヱネアスは、そのことの蹴り出しのタイミングを計っている。蹴り出されるカオスの塊りをいずこへ運ぶかを、イリオネスは、その待ちの予知を感じながらも気づいてはいない状態であった。
 建国と言う名の巨大なカオスの塊りに核ができ、意志を持ち、エネルギーを発して動こうとしている。この巨大なカオスの塊りには、まだ核がなく浮遊物でしかなかった。
 彼ら一族の事業が時勢、世の中の変化にさらされるときがまじかに迫っている、その時が訪れようとしている。
 その時勢の変化は、クレタ島、キドニア、集散所、それらに覆いかぶさる『経済』という名の大波である。この大波を頭からかぶるときが一族に訪れてきているのである。
 波をかぶる、その波を起こしている大海の存在を知るときが、彼らに訪れてきていた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  694

2016-01-15 05:19:38 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、ドックス、我々は多くの知恵を寄せ集めてこの新艇を建造している。結果は上々と決まっている。それが俺の想いだ。オキテス、お前はどう考えている?』
 『それは言えている、俺も同じ想いだ。試作する、製作する、品質の向上、俺に異論はない。俺の想いは、胸を張っての5艇の早期完売だ。最高の品質と性能、このうえない使いやすさ、そして、それを売る適正な価格設定だ。『あ~あ、いい買い物をした』新艇を買い求めたお客にそのように思っていただきたい。それが俺の本音だ』
 『おう、お前の言うとおりだ。この仕事に携わった者たちが満足する結果でありたい。そして、客の満足だ。それでこそ未来につながっていく』
 聞いているドックスが口を開いた。
 『お二人の想いを必ず達成する新艇を造ります。約束します』
 『おう、ドックス、いいことを言ってくれる。宜しく頼む』
 三人は笑顔でうなずき合った。
 新艇建造途中での艇の仕様変更、試乗結果、設計作業、彼ら三人に改めて緊張の時が訪れる、彼らの話し合いが終わった。
 パリヌルスとオキテスは場から引き揚げた。彼らの話題がガリダ方へ支払う総額を書き記した木片の事に移った。
 『総額は数字で書かれている。それは理解できる。ただ、それがどれだけなのか、その実態が全くわからない。それが時勢というものなのかな。その価値の実態を正しく知りたい。そして、世の中がどのように動いているかも俺は知りたい。パリヌルス、お前もそれを知りたいと思わないか』
 『おう、お前の言うとおりだ。それは俺も知りたい。おおよそ、あいまいではなく、正しく知りたい。我々が未来へ向かうために正しく知っていなければならないことだ』
 『そうだろう、明後日、キドニアへ行くのは、それを知るためだ』
 『解った!』
 『その件について、明日、オロンテスがキドニアから帰ってくるのを待って、統領を交えて五人で打ち合わせだ』
 『了解。明日は、ギアスにヘルメスの新たな帆張りの試乗結果についても聞かねばならない、その様に段取りする』
 二人は意志の確認をした。彼らの心は熱く燃えている、明日が見えていた。

 オロンテスはパン事業部のスタッフたちを集めて話し合いをしている。
 『お前ら三人が知恵を寄せ集めての発想がこれか』
 『そうです』
 『まあ~、やってみろ!』
 オロンテスがセレストスに指示を出した。
 『三人の話を聞いて、明日、そのように品物を整えてくれ』
 『了解しました』
 オロンテスは、工房のスタッフたちの方へ身体を向けた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  693

2016-01-14 06:16:34 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『オキテス、明日、五人で打ち合わせだ。オロンテスがキドニアから帰ってきてからでいい』
 『判ろました。その旨、二人に伝えます』
 『おう、そうしてくれ』
 オキテスは、イリオネスに報告を終えて、浜へと下った。
 『おう、パリヌルス、今日の会議の事について話す。集散所方から新艇建造用材の支払額が決まった旨の報告があった』
 『我々にとって、その条件はいいのか?』
 『その総額が高いのか、安いのか、どうなのか、俺には、さっぱり解らん。それについて、明後日だが統領以下五人、お前を含めてキドニアへ出かけることになった。宜しく頼む。それから新艇の価格は15日後には決定する。その間に会議は2回やることになっている、というわけだ』
 『明後日のキドニア行きの件だが用件は?』
 『それだが、ちょっと恥ずかしいが、時勢の勉強だ。スダヌスから、ガリダ方に支払う用材価格の事を主題にして、時勢、世の中の事についての勉強会といったところだ。俺らが知らない時勢、世の中の変化について知ろうということだ』
 『そうか、解った。俺らが世の中の変化から置いてけぼりになっているということか』
 『まあ~、言うなればそういうことだ。世の中が変化している、軍団長の感慨は、こうであった。社会の変化に追随、順応するより、社会を変えていく、その主役になりたいと言っている。うなずける、その主役になりたいと俺も思う』
 『解った、解った。おう、オキテス、俺から伝えておきたいことがある。ギアスの発想でだが、ヘルメスに手を加えている。ドックスには指示をした。事後報告だ、よろしく頼む』
 『解った。明後日のキドニア行きの件、よろしく頼む』
 『おう、了解!』
 話は終わった。日没までには間がある。二人は歩み始めた。ヘルメス改造の場へと足を運ぶ。
 ヘルメスの改造の場にはドックスの指示する声が飛んでいる。20人余りの者たちが総がかりで作業に取り組んでいる。緊張とみなぎるパワーを感じる。ドックスが二人に近づいて、声をかけた。
 『両隊長、これはなかなかのいい思い付きです。合理性があります。艇全体に対する帆柱の設定位置については私が決めました。ヘルメスの全体的なバランスを考えての設定です。事情によってですが、新艇の設計変更をしなければなりません』
 『解った。明日の試乗、ギアスからの報告、我々の試乗による結果次第で、即、その作業に取り掛かる。ドックス、その予定でいてくれ』
 『解りました。いい結果が出ればいいですね』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  692

2016-01-13 05:40:18 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、新艇建造の場へ行って、ドックスを呼んできてくれ』
 『はいっ!』
 張り番の者が新艇建造の場へと走った。間をおかずにドックスが来る。
 パリヌルスは、ギアスが砂地に描いた艇の姿を見るように声をかける。
 『うっう~ん、これはいいかも知れませんな。ちょっと未来を感じさせる船ですな。隊長、それで?』
 『これをヘルメスに造作をするには、時間はどれくらいかかる?』
 『そうですな?』
 ドックスが首をかしげる。
 『総がかりで取り掛かってやれば、日没までやって、明朝は早朝から取り掛かる、それで、キドニア行き朝便に間に合わせられます。少々ですが、時間に余裕をみておいていただければ幸いです。明日一日ギアスが艇に乗って操作に慣れれば十分だと考えられます。ところで、これの発想は誰です?』
 『この艇の発想はギアスだ』
 『そうですか、発想の理屈をちょっと聞いて、即、仕事に取り掛かりましょうか』
 『おう、そうしてくれ。ギアス、棟梁と一緒に行って、帆柱の位置と帆のカタチの理屈を説明して、仕事を手伝うのだ。帆と帆柱に関してはドックス棟梁が詳しい。お前の理屈を船理論に照らし合わせて、正しいようであれば、あとは棟梁に任せて、指示に従えばそれでいい。以上だ』
 『そう言うことだ。ドックス棟梁、よろしく頼む』
 指示を終えたパリヌルスは、帆と帆柱構造の新構想の理屈を考えて、理屈の肉盛りをした。理論を構築して実際の合理性を考えた。ヘルメスに現在備えている帆と帆柱構造に比しての進歩性も考えた。彼は、ギアスの発想に漠然とした進歩性のあることを感じ取っていた。船の走行に関する細やかな操作ができることに気づいた。
 
 オキテスは、イリオネスに今日の集散所においての事の始終を報告している。
 明後日の統領以下五人のキドニア行きを説明して、例の新艇建造用材の総額を記した木片を見せながら、会議の詳細を話し、スダヌスとの話し合ったことを詳しく告げた。
 イリオネスは、用材の総額を記した木片をオキテスから受け取り口を開いた。
 『明後日のキドニア行き件了解した。それから木片に書かれた数字の事だが、これまでの事を思い起こしてよく考える。世の中が進んでいる、その変化に順応していかねばならない。オキテス、世の中が変わっていく、進化していく、変化をうけ、それに順応ではなく、変化させていく役を担っていきたいものだ』
 イリオネスは、オキテスの報告を聞いて感慨を述べた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  691

2016-01-12 05:16:26 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスからギアスに声がかかる。
 『おう、ギアス、俺も気を配るが、気を配っていこう!急がずともいい!あくまでも無事帰着だ!』
 『はい!判りました』
 風に飛ばされるオキテスの声を何とか聞きとった。ヘルメスは海濤にあおられながらであったが無事に帰着した。浜に降り立った彼らは忙しかった。
 オキテスは、オロンテスと二言三言、言葉を交わして、イリオネスのところへ向かう。オロンテスは、売り場のスタッフ三人に話しかけた。
 『おう、お前らに考えるように言っておいた課題の結論を出したのか?夕めしを終えたら打ち合わせる。パン工房でやる。彼等にも別課題を検討するように言ってある。いいな。三人が寄って考えれば、いい知恵が湧いて出る』
 『はい!』
 三人は口をそろえて答える。
 ギアスは、漕ぎかた一同をねぎらった。
 『おう、今日は往きも帰りもきつかった。一同、大変ご苦労であった。無事帰着した。ヘルメスを浜に揚げて、体を休めてくれ』
 『おうっ!』と答えが返った。
 パリヌルスは、これらの情景を浜に立って眺めていた。用件を終えたギアスがパリヌルスの傍らに立った。
 『おう、ギアス、今日は大変だったな。荒れた海を往き、そして、無事帰って来た。ご苦労であった』
 『明後日、試乗会の催行です』
 『ほう、客筋は?』
 『この浜から、キドニアに行く途中にある漁村の人たちです』
 『ほう、そうか』
 『ついては、私は、ヘルメスの帆張りについて考えていたのですが、私なりの結論に達しました。聞いてくれますか』
 『おう、聞こう。話してみろ』
 『新艇は、2方法の帆張りが考えられています。私考えでは、艇の中央位置の帆柱を適当な間隔をとって帆柱を2本にして帆張りすればどうであろうかと考えました』
 『うっう~ん、いいかもしれん。ギアス、その艇のカタチを地面に描いてみろ!』
 『判りました』
 ギアスは手ごろな棒を探した。簡単に見当たらない。浜は常にきれいに清掃されている。ギアスは、どうにか1本の棒を探し当ててきた。砂地に線を引く、彼が構想した艇の姿を描いた。
 『ほっほう、いいカタチではないか。走りについて考えられる合理性を説明できるか?それを聞かせろ』
 『はい、今、備えている三角帆に近い台形の帆は、三角形にします。中央よりやや後方に立てる帆柱には、四角形ヨコ帆ではなく、小型台形の帆を2段にして設ける。このようにすれば、海上において発生するあらゆる状況に対応できると考えました』
 パリヌルスは、砂地に描かれた艇の姿を見て、近くにいる張り番の者を呼んだ。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   1月8日 投稿の欠字のお詫びをいたします。

2016-01-10 09:27:48 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 1月8日の投稿での欠字のお詫びを申し上げます。

 下段から三段目
 
 運営されているです   運営されているのです  に訂正いたします。
 の が欠字していました。深くお詫びいたします。

                   山田 秀雄

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  690

2016-01-10 07:55:41 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 スダヌスは足を踏み鳴らした。説明がうまくできない、もどかしい、そのたどたどしさに顔を赤らめた。
 心が定まらない、恥をかいてもかまわん、聞くほうも知らないことを語るのだ、彼は開き直った。
 『しかし、何ですな。俺らが生計を立てている、この社会が変わろうとしている。この木片に書かれた数字は、新しい金勘定の数字ですな。まあ~、我々は『はい、そうですか』と言うよりほかにないわけです』
 『ほう、その様な数字なのか。言われてみれば解らんでもない。物の数でないことは確かだ。しかし、正直なところ何も解っていない、それが本音だ。明後日、統領が来るとき、軍団長もパリヌルスも俺ら二人も同道する。浜頭、その時は我々が納得するように話してもらいたい』
 『承知しました。委細について、納得いただけるよう調べておきます。今日の俺は、説明に戸惑っています。全く恥ずかしい。しかし、この数字は、ガリダ方に支払う、新艇建造用材の総額であることは間違いのないことです』
 三人は、木片の数字に目線を注いだ。
 『ご両人、よく見てください。この数字が用材の総額です。ここに書いてあるのが金額の呼称単位を表している字です。今の俺が言えるのはそこまでです』
 オロンテスとオキテスは、頭を傾げながらうなずいた。
 『浜頭、俺らが帰る時間の事もある。今日はここまでにしよう。明後日、統領と来たときには、これについてしっかり教えてもらう。宜しく頼む』
 『判りました。その日は、昼食をこちらで準備しておきます。統領によろしくお伝えください。朝からの風もおさまってきてはいますが、海の荒れには充分に気を配って帰ってください』
 『おう、ありがとう。ではではーーー』
 二人はスダヌスの売り場をひきあげた。
 パン売り場に戻って来たオロンテスは、直ちに売り場のチエックに取り掛かった。
 『おう、パンは売り切ったようだな』
 『はい、売り切れました。試食堅パンのプレゼントが効いているみたいです』
 『おう、それは重畳、かたずけて帰るとしよう』
 一同が船だまりへと向かう、ヘルメスに乗り込む、波はヘルメスをあおる、櫂捌きが泡立てる、ヘルメスは波を裂いて岸から離れた。
 雲の切れ間から陽がのぞく、ギアスは、艇上の者たちに気づかれないように姿を見せた陽に帰りの無事を祈った。
 彼は、3日後に迫っている試乗会の事を思案していた。その思案は、帆張りに関することであった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  689

2016-01-08 05:41:29 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『ご両人、価格決定に至る段取りは、今、聴かれた通りだ。どう考えられるかな?』
 『スダヌス浜頭、ハニタス殿の言われた段取りで結構です。要は、確実実行です。承諾を伝えてください』
 『判った』
 スダヌスは真向かいの席にいるハニタスと目を合わせた。
 『ハニタス殿、今、言われた価格決定段取りを了解いたしました』
 『判りました。では、この段取りということで、この案件を進めます、いいですね。皆さんのほうでも新艇の価格について考えてください』
 ここでハニタスは、一拍の間を取って話し続けた。
 『それでは、ガリダ方と決着した新艇建造用材の価格はこの通りです』と言って、スダヌスとオキテスに用材の買取の総額を書き記した木片を渡した。
 オキテスとオロンテスは顔を見合わせた。二人は木片に書かれた数字を見ても、何なのかさっぱり解らない、理解に苦しんだ。これについては、会議を終えてからスダヌスに教えを請わなければ方法がない。会議の場で質すことはしなかった。
 ハニタスが一同に話しかける。
 『今日の会議で話したことについて、質問はありますかな。無いようであれば会議はこれまでとして終わります。次回会議は5日後に、この場所で開きます。ご苦労様でした』
 会議に出席していた五人は、話を交わしながら散会した。
 オキテスがスダヌスに話しかける。
 『浜頭、この木片に書かれたこの数字の事だが、オロンテスも、この俺もだが、どのように理解すればいいのか解らん。このことについて教えてほしい』
 『おう、そうか。それについては売り場へ戻って説明しよう』
 三人は魚売り場へと歩き出した。スダヌスは独り言ちる。『考えてみれば、そう言うことか。そうであろうな』彼は納得した。
 三人は、売り場の一隅で席をとって落ち着いた。スダヌスは、二人を前にして、会議で受け取って来た木片に見入る、おもむろに口を開く。
 『ご両人、お二人とも、このような数字、単位に関係のない部署を担当しておられる。これはですなーーー』
 彼は、じい~っと二人の目を見た。
 『これはですな、イリオネス軍団長殿が必要とする数字と単位ですな。このクレタは、ギリシアに統治されている、ゆえに経済の方、金銭に関する制度もギリシアの制度によって運営されているです、ギリシアで通用している貨幣は、クレタ島では使用してはいませんが、クノッソス、イラクリオン当たりでは使われ始めています。クレタでは、日常の事は集散所が取り締まって運営している状態です』
 スダヌスはここまで言って一息入れた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  688

2016-01-06 05:18:51 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 二人は、広いとは言えない二階へ通じる階段を上った。小部屋の入り口に立つ、スダヌスは席についている、ハニタスとトミタスもいる、ハニタスが席を立って二人を席に誘う、一同が立つ、挨拶を交わして、席に着く、ハニタスが口を開いた。
 『ご一同、ご苦労様です。いや、時のたつのは早いものです。新艇の建造が始まり、もう1箇月と数日が過ぎました。新艇完成まで2箇月をきりました。私たちが事案としている、新艇の価格を決める会議を始めます』
 ハニタスは、一同と目を合わせる、言葉を継いでいく。
 『新艇建造の用材を納入したガリダ方との価格の折衝が終わりました。満足のいく価格で決着しました。トミタスの方で、その数字をもとにして価格検討に着手しています』
 一同と顔を合わせる。
 『諸条件を考えての価格検討です。新艇1艇あたりの用材原価、1艇あたりの建造原価、また、新艇に対応する船の市場価格、5艇同時完成による新艇の割安感の実現をどうするかを考えているといった状態です。価格決定に関する段取りを決めて価格発表にこぎつけたい。そのように考えています』
 一同は、ハニタスの意向を理解した。
 スダヌスが口を開く。
 『ハニタス殿、それでだが、ハニタス殿の考えておられる価格発表に到る段取りを聞きたい。今日の会議には、私らは受け身のカタチで会議に出席している』
 『判りました。私の考えを言います。それでいいかどうかを考えて、段取り決定といきましょう』
 スダヌスは、オキテス、オロンテスの顔を見る、二人は、スダヌスに目で答える。
 『ハニタス殿、貴方の考えを聞きます。言ってください』
 『判りました。私の考えているところを言います』
 トミタスと二言三言言葉を交わして口を開いた。
 『5日後に第2回会議を開き、その席で算出した新艇の価格を提示します。この価格について討議します。そして、5日後の第3回会議にさらに価格を検討します。その席で異論がないとすれば、その数字に決定します。更に5日間の期間を経て、集散所として、正式に新艇価格発表をいたします。都合、今日から数えて15日後には新艇の価格決定ということになります』
 スダヌスは、オキテスとオロンテスの二人と話し合った。