『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  695

2016-01-16 05:46:12 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『次いで、工房の者たちに聞く。新しい堅パンの構想をまとめたかな?』
 『はい、まとめました。棟梁、これが試しに焼きあげた堅パンです。見てください』
 『おう、これは、いい!グッドだ。この大きさ、姿カタチもいい。これなら、お客に対しても求めやすい、量目設定と価格設定ができる。お前らよくやった。明日、セレストスに相談して包装容器について考えることだ』
 一拍の間を取って一同を見まわした。
 新しく見本に焼かれた堅パンは、手に乗るサイズで肉厚は1センチくらいの小判型であった。
 『中に入れる堅パンの量、価格設定、お客が出した手をひっこめないように検討して作ってみてくれ。これまでに作った。堅パンの製造は打ち切る。以上だ』
 オロンテスは、テカリオンに納めた堅パンと同じ堅パンの製造をしたくはなかった。
 彼らの検討、話し合いは終わった。彼はセレストスに声をかけた。
 『おう、セレストス、明日の準備はぬかりなくできているな。明後日だが、キドニアで試乗会を催行することになっている。堅パンをお客様に渡そうと思う。15枚くらい入れた袋詰めを10個作っておいてほしい』
 『了解しました』
 オロンテスは、明日、明後日の手配指示を終えた。
 
 彼ら一族の事業部門の一切がゆだねられているパリヌルスら三人は、知恵と力、そして、技を駆使して、責任担当する業務に真剣に取り組んでいる。
 彼らはクレタ島の一隅に住を営み、コミュニテイを形成して、地に根を下ろすか、下ろすまいか、そのことについて、三人の気が付かないところで、そのことに気づかないまま迷い思案されていた。
 アヱネアスは、そのことの蹴り出しのタイミングを計っている。蹴り出されるカオスの塊りをいずこへ運ぶかを、イリオネスは、その待ちの予知を感じながらも気づいてはいない状態であった。
 建国と言う名の巨大なカオスの塊りに核ができ、意志を持ち、エネルギーを発して動こうとしている。この巨大なカオスの塊りには、まだ核がなく浮遊物でしかなかった。
 彼ら一族の事業が時勢、世の中の変化にさらされるときがまじかに迫っている、その時が訪れようとしている。
 その時勢の変化は、クレタ島、キドニア、集散所、それらに覆いかぶさる『経済』という名の大波である。この大波を頭からかぶるときが一族に訪れてきているのである。
 波をかぶる、その波を起こしている大海の存在を知るときが、彼らに訪れてきていた。