第１章 トロイからの脱出 ２０

　『皆いるか。聞いての通りだ。次は、軍団の移動だ。ヘレノス、カピュスの部隊は、任に就いて出発した。アレテス、軍団の者たち総勢、何人くらいだ。』
　『３００人近くに増えています。』
　『馬が不足するな。アカテス、何か方法はないか。皆と相談しろ！』
　『馬は何とかするとして、軍団の脱出について打ち合わせをする。アレテス、迎えの部隊を寄こしてくれたことに礼を言うぞ。ありがとう。全員を集めてくれ！』
　『判りました。軍団長！あの～、穴は掘り終わっています。』
　アレテスは、手配りをして、グループ毎に散らばっている軍団の兵たち全員を一箇所に集めた。

第１章 トロイからの脱出 １９

　『ヘレノス、カピュス近くに寄れ。交易船が係留されているのは、イーダ山の山すその先にある入り江だ、判るな。そんなに遠くはない。皆を早足で歩ませるのだ。うまくいけば、星が空にある間に出航できる。係留されているのは、交易船が５隻、軍船が２～３隻あると思う。管理しているのは、オキテスと言う、屈強の者だ。軍船には、お前たちの部下と兵たちを乗せる、市民たちは、交易船だ。船には、帆があるが交易船の＜かい＞は、軍船に比べて少ない、海峡を抜けるまでは、懸命に＜かい＞を漕いで抜けろ！帆走はだめだ！エーゲ海にでたら、北に向かい、トラキアのエノスの港に入れ。その港に向けて懸命に航走しろ！運がよければ、風は南から来る。アレテス、俺の書いたものをヘレノスに渡してくれ。あとはお前たちの才覚で難事を切り抜けろ！以上だ。聞くことはないな。さあ～っ、急いで行け！』
　アエネアスは、彼らの背中を成功の念をこめて、力強く押した。市民と軍団の者たち、総勢２００人余りを、馬囲いの地から送り出した。

第１章 トロイからの脱出 １８

　アエネアスは、皆の心に火を点け、燃やしたところで、再び、口を開いた。
　『これから指示することは、確実に遂行してほしい。そうでない限り成功はありえない。ここにいる市民の方は、市民の皆をいい方向に導いてください。いいですね。軍団の兵たちが貴方たちに指示します。まず、ヘレノス、カピュス、お前たちは、市民たちを引率し、護衛の任に当たり、海上においては、正しく水先案内の任を果たすのだ。判ったな！頼んだぞ。市民の皆さん、貴方たちは、イーダ山の山すそを通って、船舶の係留されている入り江に向かい、そこで交易船に乗船してもらう。山道の案内には、軍団の兵が当たります。ヘレノス、カピュス、兵たちの指示に従ってください。脱出は、必ず成功します。詳しい説明はしません。軍団の者たちを信じてください。多少のトラブルは、堪えて下さい。』　
　市民たちへの説明を終えた。