ソリタンは、何かを思い出し、急に涙声となった。
『私は家具の後ろに身を隠し助かりましたが、奴らの去った家の中は、見るも無残な状態でした。両親は殺されわ、妹娘は連れ去られるわ、収穫した農産物は持ち去られるわ、家具類は打ち壊されるわ、目も当てられない状態でした。復讐を思うが、自分の非力ではどうにもならない、全くなすすべがなく、途方に暮れ、村を去ることにした次第です。これがこの集落が無人となったわけです』
彼は、腕で涙をぬぐった。2年半前に彼を襲った残虐の顛末を話し終えた。
『ソリタン、無念であろう。お前の気持ちは充分にわかる。そ奴らは、あの小島に屯している海賊どもか?』
『そうです、奴らは、あの小島を根拠地として、このクレタ島の海岸近くの集落を襲うのです』
『奴らの船は何隻ぐらいだ?そして、海賊の総勢は何十人くらいいるか?』
『大き目の漁船が2隻、1隻当たり10人くらい乗り組んでいます。小さめの船が5隻で40人です。また、島の西側には小船が5隻で30人、しめて90人と考えられます。奴らは夜襲もやります。ですが、夜半過ぎには必ず帰ってきます。あの島以外では休むところがないのです。クレタ海には、キクラデスのように小島がないので、襲撃が終わったら帰ってくるよりほかに方法がないのです』
『そうか、判った。ところで、お前、このキドニア辺りの天気に詳しいか?』
『天気の事、模様替わりについては、詳しいほうだと自分では思っていますが、父からよく教えてもらっていましたから』
パリヌルスは、何となく深く思案している様子であった。
『私は家具の後ろに身を隠し助かりましたが、奴らの去った家の中は、見るも無残な状態でした。両親は殺されわ、妹娘は連れ去られるわ、収穫した農産物は持ち去られるわ、家具類は打ち壊されるわ、目も当てられない状態でした。復讐を思うが、自分の非力ではどうにもならない、全くなすすべがなく、途方に暮れ、村を去ることにした次第です。これがこの集落が無人となったわけです』
彼は、腕で涙をぬぐった。2年半前に彼を襲った残虐の顛末を話し終えた。
『ソリタン、無念であろう。お前の気持ちは充分にわかる。そ奴らは、あの小島に屯している海賊どもか?』
『そうです、奴らは、あの小島を根拠地として、このクレタ島の海岸近くの集落を襲うのです』
『奴らの船は何隻ぐらいだ?そして、海賊の総勢は何十人くらいいるか?』
『大き目の漁船が2隻、1隻当たり10人くらい乗り組んでいます。小さめの船が5隻で40人です。また、島の西側には小船が5隻で30人、しめて90人と考えられます。奴らは夜襲もやります。ですが、夜半過ぎには必ず帰ってきます。あの島以外では休むところがないのです。クレタ海には、キクラデスのように小島がないので、襲撃が終わったら帰ってくるよりほかに方法がないのです』
『そうか、判った。ところで、お前、このキドニア辺りの天気に詳しいか?』
『天気の事、模様替わりについては、詳しいほうだと自分では思っていますが、父からよく教えてもらっていましたから』
パリヌルスは、何となく深く思案している様子であった。