『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第7章 築砦 ３６

　『オキテス、テカリオンとの話はこのような具合だ。いいか』
　『パリヌルス、それでいい。その頃までに、こちらも落ち着くというものだ』
　『テカリオン、いいか。それまでに我々の交易に関する対応姿勢が決まっている。これからも宜しく頼む、いいな』
　『俺も、明日早朝にクレタを離れる。ところで、オロンテス殿をキドニアで紹介しようと思っているところがある。また、浜頭のダルトンも、この際知り合っておいて損はない。そういったところでオロンテス殿とキドニアの街へ出かけようと思うが、どうだ』
　『なるほど、オキテス、会議の事だが、オロンテス不在でも構わないか、いけるか』
　『それは大丈夫だ。オロンテス、お前の予定は？』
　『予定、それはありません。あなたたち二人の承諾があれば、私はテカリオン殿とキドニアの街に出向きます』
　『判った。歩きは大変だ。ギアスがもう帰ってくる頃だ。舟艇で行けテカリオン。ギアスに送らせる。セレストス、クリテスは今はいない。3人ほど部下を連れていけ。取引関係の顔つなぎは大切な用件だ』
　『判りました。行ってきます』
　話の終わるのを確かめて、テカリオンはオロンテスに話しかけた。
　『オロンテス殿、朝食のパン、とてもおいしくいただきました。余分がありますかな。もし、余分があるようでしたら、5個づつふたつ、手土産に持参しましょう』
　『余分はあります。準備いたします。テカリオン殿、ギアスが帰り次第、出かけましょう』
　『判りました』
　オロンテスに返事を返しながら、テカリオンはパリヌルスの耳元にささやいた。
　『今は全く駄目だが、クレタは昔、船を造って輸出していた。クレタの技術は過去のものだ。次に来るまでに、舟艇を3艇ほど造ってはどうか』
　パリヌルスは言葉を返さなかった。頷きの目線を返した。