『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY             第5章  クレタ島  118

2012-09-07 07:29:22 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 船団は、北からの風に押されて南下を続けていく、パリヌルスの胸算用では、日没に充分な余裕を持って到着する予定としていた。海峡にこのように願ってもないような、船団を押すいい風が吹いているとは知ってはいなかった。船上の者たちは、この海域で如何なることがおきようとも、その事態に対応する余裕が出てきていた。パリヌルスは舳先に立って、風景を見ながら停泊地に至るまでのことに集中して考えていた。時折、太陽を見上げ位置を確認しながら考えた。
 南下を続ける船団の威容は、浜で眺める者たちを圧倒している。見物の者たちには『これは、何事か?』 と首を傾げさせた。海上で行き交う小船、漁船の者たちの怪訝な目線も感じられた。
 先頭を行くオキテス、後続のパリヌルスも方向を転じる海上の目安点を考えていた。
 後続のパリヌルスから、松明信号が送られてきた。
 『おいっ!アミクス。信号だ。松明信号を読み取れ!』
 『判りました。信号がうまくありません。読み取りにくい、ちょっと待ってください』
 『何といってきている』
 『読み取れました。内容は、『右手、小島、曲がれ』です』
 オキテスは、視認するべく前方、右手方向に注意を払った。
 目当ての小島は、7~8キロも先にある小島である。どうにか見つけた。
 彼は、操舵している者に向けて大声をあげた。