『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY             第5章  クレタ島  115

2012-09-04 06:43:45 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 船団は朝明けの穏やかな海洋を泡立て、波を割って南下した。吹きすぎていく微風では、展帆は適当ではないと判断を下していた。
 舳先に立っているオキテスは、左にナクソス島の海峡に突き出た突端と、そして、右にパロス島の海岸線が視野にはいってきた。彼は方角時板を取り出して時間経過の見当を計った。中心の棒がつくる影を見つめた。
 『ふっふ~ん、これくらいか。まあ~、こんなものだろう』
 デロス島の停泊地を離岸してからの時間を振り返った。今様時間で3時間くらいが経っていた。
 船団は、ナクソス、パロスの両島が迫った海峡の一番狭い箇所に迫っていた。両島の間が5キロメートルくらいと想われる箇所である。彼は狭い海峡の真ん中を進むよう操舵の者に指示を出した。そうした次に、じいっと両島の浜を見つめた。
 このような地勢のであったら、海の深さは深くはないであろうと想像した。真ん中を行けと言ったパリヌルスの言葉を思い出していた。
 『お~い、アミクス。操舵のものに伝えるのだ。どちらの浜へも片寄るな真ん中を行けと伝えろ』
 アミクスは船尾へと伝達にとんだ。
 次にオキテスは両岸の浜に慎重に目を移し、状況を探った。海賊の類を探った。今のところその類の者と思われる姿は見当たらなかった。
 それから、前方を進んでいく小型の漁船の帆のはらみと船速に注意を払った。帆がはらんでいる、船足が加速している。
 『来たな、風だ!アミクス、アミクスっ!』
 オキテスは大声をあげた。