『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第10章  アキレスとヘクトル  22

2008-02-23 08:09:38 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 アンドロマケは、戦野に目をやった。彼女がそこに見たのは、我が愛する夫ヘクトルが戦車につながれ引きずられて行く風景であった。彼女の澄んだ瞳に霧がかかり、のけざまにくずおれた。まわりの者たちが駆け寄り、彼女を助けた。気がついたアンドロマケは、絶叫の慟哭に沈んだ。彼女を囲んでいた女性たちの号泣は一段と激しくなった。
 老王のプリアモス、母のへカベは途方にくれた。心に突き刺さる、この運命の苛烈、一国を統べる将の死、このトロイ城市の明日、このあと如何にすべきか、プリアモスは、心痛に押しつぶされそうであった。
 母へカベは、白髪をかきむしり、声をしぼって泣き叫んだ。ヘクトルの戦死の報に接したトロイ城市の市民は、哀悼と慟哭に咽ぶとともに、明日のトロイの事を考えた。
 連合軍内は、今日の戦闘を振り返って沸いていた。アキレスとその軍団の戦線復帰と、その働きにより、勢いの出た各将の率いる軍団も大いなる戦果をあげていたのである。大きい戦果に沸く連合軍、哀哭の悲痛に沈むトロイ。戦野の今日は暮れていった。