9月の初め、夏から秋へと時が遷り行くころ、通い慣れた木立沿いの道を、夕暮れ時、いつものように一人で歩いていくと、小雨が降ってきました。
ここに来ることはもうない、最後の道行かもしれない、という事情があって、とりたてて楽しいことがあったわけでもない場所のそこかしこが、名残惜しさをにじませて、鳥や虫の音、そして湿度に満ちた空間は濃密さを増し、そこに蜩の声が、途絶えようとしてはまた響き出し、何時までも止むことがありませんでした。
多くの世のあれこれの場所で、多くの人が味わったであろう、別れのひと時の情景を、しみじみと味わいました。
このあめを かぎりとおもう みちゆきに とだえもはてず ひぐらしのなく
この雨を 限りと思ふ 道行に 途絶えも果てず 蜩の鳴く
(この道を歩くのもこれで最後かと思いながら行くと、雨が名残りのように降ってきて、蜩の鳴き声が途切れてはまた鳴きだして、いつもまでも止むことがありません)
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『くりぷとむねじあ歌物語』
『くりぷとむねじあ和歌集』
『古語短歌入門』
ここに来ることはもうない、最後の道行かもしれない、という事情があって、とりたてて楽しいことがあったわけでもない場所のそこかしこが、名残惜しさをにじませて、鳥や虫の音、そして湿度に満ちた空間は濃密さを増し、そこに蜩の声が、途絶えようとしてはまた響き出し、何時までも止むことがありませんでした。
多くの世のあれこれの場所で、多くの人が味わったであろう、別れのひと時の情景を、しみじみと味わいました。
このあめを かぎりとおもう みちゆきに とだえもはてず ひぐらしのなく
この雨を 限りと思ふ 道行に 途絶えも果てず 蜩の鳴く
(この道を歩くのもこれで最後かと思いながら行くと、雨が名残りのように降ってきて、蜩の鳴き声が途切れてはまた鳴きだして、いつもまでも止むことがありません)
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