カラムシの葉がずいぶん食べられた痕,茎が食べられてできた縦状の溝,そうしたものがラミーカミキリの生態を物語っています。そうだとすると,卵についてもカラムシの葉か茎で何らかの手掛かりが見つかるのではないか,わずかな期待を持ちつつ観察を始めました。
飼育ケースに入れて数日後。「とにかく調べることだ」と思い,食痕を中心に見て行きました。卵のサイズや数などの情報はまったくなし。それで,ルーペで丹念に調べるほかありません。
調べているうちに,縦状の食痕の端に,一つの卵が突き刺さったように立っているのが見つかりました。「もしかすると,これが卵なのかも」。食痕に乗っかるようにして立っているのは,溝ができてから産み付けた証拠です。ラミーカミキリ以外の昆虫はいないのだから,もうこれはほとんどまちがいなくラミーカミキリの卵というほかありません。
これはラッキー! さっそく卵と出会えたのです。
その後もっとないかと,他を探しました。そうしたら,なんとあったのです。二つ目は同じく茎で,縦状にわずかにできた裂け目に無理やり押し込んだようにして立っているではありませんか。びっくり! よくもまあ,窮屈な隙間に産み付けたものです。これなら少々の刺激が加えられても落下の恐れはないでしょう。
近づいて見てみると……。
これで卵が二つ見つかりました。サイズは高さ1.8mm,直径0.7mm。卵は茎に一つずつ独立して産み付けられるようです。ただ、産み付けられ方はこの二例だけなのでまだいい切ることはできません。
畑の隅で自生するカラムシでも調べてみました。しかし,卵らしいものは見つかりませんでした。
今回出会った卵については,孵化を観察できるまで見守ることにします。今後目撃できる事実はわたしにはすべて新事実です。わくわくしています。