2000年10月に欧州で承認された、乳児用6価ワクチン Hexavac (サノフィー・メルク)と Infanrix Hexa (GSK)接種後の突然死のケースの報告。
6価ワクチンは、複数のワクチン接種の受け入れを容易とするために、5価ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風、インフルエンザ、ポリオ)に、B型肝炎を追加したもの。
欧州連合で、2003年4月までに、約300万人の小児に接種された。900万本が販売された。
接種は、生後2ヵ月、4ヵ月、6ヵ月、12から14ヵ月の4回行われる。
このレターでは、2001年から2004年にミュンヘンの法医学研究所で行われた6例の検死結果を報告する。
3例の女児、3例の男児、年齢は4カ月から17カ月。
死亡の48時間以内に、5人が Hexavac、1人が Infanrix Hexa を接種している。
3人は、ワクチン接種すぐに、元気がない、食欲がない、39 ◦Cまでの発熱、眠れないなどの症状があった。
6人とも病歴がなく、原因不明で突然死亡しているので、乳幼児突然死症候群と考えらる。
6人すべてが、神経病理学的異常と病理組織学的異常の他に、異常な脳浮腫を示しており、この点が他の突然死と異なっている。
これらの異常なケースを3例みたあと、病理学的調査を更に行う事にした。
異常な神経病理学的所見は、急性うっ血、脳血液関門欠損、マクロファージとリンパ細胞の軟膜への軽度の浸潤、リンパ球の血管周囲への浸潤、脳橋、中脳、皮質へのT細胞のびまん性浸潤、海馬と脳橋のミクログリア、1例で小脳の壊死
4例で、リンパ球および好酸球の肝臓への軽度の浸潤、2例では肺、1例では脾臓。
1例で、接種サイトの皮膚の組織病理検査を行ったところ、リンパ球および好酸球が皮膚および皮下層に浸潤していた。
マスト細胞トリプターゼとIgEのレベル検査を3例で実施。
トリプターゼは1例で通常よりわずかに上昇、2例で、顕著に上昇(それぞれ18, 100,
108g/l)。
IgEは異常なく、破傷風毒素やラテックスに特異的なIgEは検出されなかった。
検死の結果、死亡を説明できるような他の重篤な異常はなし。
調査した例における神経病理学的所見は、死亡を説明するものではなさそうである。
なぜなら、ワクチン接種後の脳障害は、主に、炎症性浸潤のないうっ血性と浮腫性脳と関連しているからである。
ワクチン接種後の脳障害はとくに百日咳ワクチンと関連して報告されている。そのようなケースでの典型的な臨床症状は、嗜眠、痙攣、頭痛、運動麻痺などである。
そのような症状は調査した例には見られなかった。
浮腫または充血による臨床症状の欠如した脳の重量増加は、「良性頭蓋内圧亢進症」と記述され、主にDTPワクチン後に報告されている。
現在、我々の知る限り、12歳までの小児でのマスト細胞トリプターゼ血漿濃度の参考値はない。
12歳以上の小児では、95パーセンタイルは11.4g/lである。
トリプターゼの上昇は、SIDで何度も記述されている。
我々の乳幼児が、アトピー体質への素因があったとは考えられない。なぜなら、IgEレベルに異常がないまま、マスト細胞トリプターゼ血漿濃度が上昇していたからである。
トリプターゼ上昇と好酸球上昇は、ワクチン後に発症したアナフィラキシー反応を示唆する。急性アナフィラキシー反応には死亡までの時間が比較的長かったので、遅延性免疫反応が考察されるべきである。
6価ワクチンが販売される前(1994年から2000年)、DTPワクチン接種後まもなく死亡した198例の中で、我々が調査したのは1例であった。しかし、2001年から2004年に74人の突然死のうち我々の研究所で5例が特定されている。これは、13倍に増加したことを意味する(地方自治体での乳幼児の検死率は約70%である)。
ドイツのすべての機関でみられたケースの最近の分析で、ワクチン接種の翌日に死亡する統計的な予期値がわかっている。
これらの10例のうち4例がミュンヘンで検死され、ミュンヘンは、ドイツの人口の7.8%であるので、実際には約50例があると思われ、これは、統計的に予期される値の500%になる。
我々は、重篤なワクチンの副作用の可能性として、これら6例を報告する。
現在のところ、これらの乳幼児の死亡がワクチンが原因であったと証明する方法はない。したがって、ワクチンと死亡の関連は不確かなままである。けれども、ワクチンを接種する医師や小児科医および両親に6価ワクチンの投与後に死に関わる合併症の可能性の情報を提供することが重要だと感じる。
特に、医師や小児科医は、合併症がより少ないと思われる5価ワクチンの使用の可能性について告知されるべきである。
最後に、もし6価ワクチンが広く使用されるなら、乳児の死亡とワクチンの関連を評価除外するために、より広範な調査が必要となるであろう。
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