◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

変な日本語、その11、「犯罪を犯す」。

2007-06-03 09:48:45 | ちゃんとしゃべれ!変な日本語
                  排ガス
 毎日聞こえてくる「犯罪を犯す」や、「排気ガス」「いちばん最初」など、見ても聞いても明らかな重複なのに、聞き慣れてしまい、もう今更どうしようもないというところまで来ているような感じのする言葉がたくさんあります。でも、「犯罪を犯す」だけはちょっと違うので、『ちゃんとしゃべれ!』でも、「日本語としてちゃんと成立していない」という項目で取り上げ、ほかの言い方について考えてみています。
 どうしようもないといっても、みんながこれでいいと思っているわけではないようで、重複でおかしいと感じている人は、「犯罪を行う」「犯罪を起こす」など、何とか違う言い方をしようとしているのです。「罪を犯す」と素直に言えばいいのですが、「犯罪」があまりに多く使われ、つい「犯罪」と言ってしまいますから、なかなかすっきりした表現は聞かれません。アナウンサー以外で「罪を犯す」と言う人はたまにいて、いわゆる文化人や裁判で地道に闘っている一般の人の言葉だからということもあるでしょうが、非常に重みがあります。
 「犯罪」とは、法律に背く行いのこと、「犯す」は、規則や道徳に背いたことをする、という意味です。文字で見ても、「頭痛が痛い」と同じですね。「犯罪を行う」は、法律に背く行いを行う、これも「頭痛が痛い」のようです。「犯罪を起こす」は明らかな間違いです。「起こす」は発生させるという意味で、例えば、「犯罪を多く発生させる環境」というように、犯罪の温床といった話なら「発生させる」もなくはない・・・気持ちは分かるのですが、ある具体例について話しているのなら適切ではありません。「けんかを起こした人が捕まって」というのも聞いたことがありますが、正しくは、「けんかをした人が捕まって」もしくは「けんか騒ぎを起こした人が捕まって」です。
 では、「犯行を犯す」はどうでしょうか。これらはすべて実際に聞いた言い方ですよ、本当にいろいろありますね。「犯行」は「犯罪行為」を縮めた言葉ですから、「痴漢行為をする」のように「犯行をする」としか言いようがありません。どうですか、「犯罪を犯す」と言いたくないなら、やはり「罪を犯す」と言うしかないようなのですが・・・。
 さて、おまけです。「事件を犯す」、本当に聞いたことがあるんだってばーっ! しかも警察官! これは「事件を起こす」ですね。それでは、「失敗を犯す」はどうですか。「失敗」の意味は、やり方がまずくて思いどおりの結果にならないことであって、それは決して罪ではないのですから、「犯す」は言いすぎです。失敗にもいろいろあり、1度経験すればもうたくさんというものもありますが、何度経験してもいいものだってあるのですから、単に「失敗する」と言えばいいですよね。

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