王位戦第6局、始まりました。羽生のゴキゲン中飛車です。流行ってますねえ、コレ。二日制なので、決着は明日。
各クラスの「順位戦」が行われています。C2クラスに僕がこっそりと応援している棋士がいます。村田智弘五段と田村康介六段です。なぜか。 この二人はすでにこのブログの将棋記事のなかに登場しています。でも「主役」ではなく、他の棋士の「引き立て役」として。だから僕は、彼らに活躍してほしい、彼らが活躍したときに彼らの記事を書こう、と思っているのです。
村田智弘五段は、上野裕和五段の記事で登場してもらいました。女流棋士の村田智穂さんと兄妹なのだそうですね。今期順位戦、3勝0敗です。
田村康介六段は、長沼洋七段の記事で書きました。田村さんも順位戦は3勝0敗。しかも今期はいまのところ14勝3敗、勝率全棋士中第2位と絶好調! というわけで今日は田村康介六段の話題。
田村康介六段は大内延介門下で、31歳。
同門に鈴木大介八段がいます。以前紹介したことのある瀬川晶司四段の本『泣き虫しょったんの奇跡』の中に、瀬川さんの部屋の中で、田村と鈴木がケンカするシーンが描かれています。まだプロになる前の、奨励会時代のエピソードです。
田村「そんなヘボ将棋やめて、遊びに行こうよ」
鈴木「ヘボ将棋とはなんだ!」
田村「ヘボだからヘボっていってんだよ」
鈴木「それが先輩に対する口の聞き方か!」
結局そのあと、周囲に諌められてケンカをやめ、6人でトランプ「大貧民」をやり、夜は雑魚寝をして、翌日は皆で競馬に行くのであるが。
田村六段といえば、「早指し」。
たとえば今期順位戦。順位戦の持ち時間は各6時間もあります。二人がそれを目一杯使うと、朝10時から始めた対局が、夜になります。(あいだに食事休憩がある) ところが田村六段の対局は、早く終わります。田村さんが「早指し」だからです。今期も、田村六段の消費時間はだいたい3時間(つまり半分しか使っていない)で、それで3連勝です!
彼がプロになりたての頃、順位戦の日に、大阪で対局しているはずの田村六段が東京の将棋会館にいるので「なぜ?」と聞いたら、「もう対局を終えて帰ってきました」というエピソードにも笑いました。
でも棋士の早指しは、ふつうはほめられたものではありません。棋士は将棋を指して「対局料」をもらって生活しています。ですから一生懸命時間一杯頑張って、全力を尽くす… それが、一般的な棋士の美学となります。
ですが田村康介はちがいます。彼の「美学」は、「なるべく時間を使わずに勝つ」なのです。だから、たぶん、ほんとは3時間だって彼にしたら「使いすぎ」なのです。
こういう棋士がいてもいい、と思います。他の棋士とは違う「美学」の棋士というのは、その個性自体が「宝」ですから。しかしその「宝」も、勝ってこそ輝く、それが棋士という仕事。
今はなくなりましたが、テレビ東京の「早指し将棋選手権」という棋戦がありました。10年前にそのTV将棋で、僕が観た田村康介という男、これが面白かった。まだプロ2年の田村が10年選手のように堂々としていました。
相手は田丸昇八段でした。その将棋は1手30秒(20秒だったか?)ですが、「早指しの田村」は2、3秒しか使わない。田村、優勢。考える、田丸八段。田丸が指すと、また2、3秒で田村は指す。そして、タバコをくわえ、ちらり、と田丸を見つめる…。その顔が、「かんがえすぎですよ、田丸さん、早く指しましょう」と言っているように僕には思えた。顔でベテランにプレッシャーをかける男、田村。
田丸さんは粘ったが、田村の勝利。 田丸は「サンドバッグでした…」と感想で語った。
NHK杯戦でも昔は指しながらタバコを吸っていたそうですが、今は見ません。この対局は準決勝で、田村康介(当時は四段)は決勝に進みました。決勝の、田村の相手は、A級棋士村山聖八段。おお、村山と田村の決勝か…! 僕はわくわくしたことを憶えています。
決勝は村山聖が勝ちました。(田村さんと村山さんとは気が合ったそうですね。) 解説や読み上げの棋士(先崎学、高橋和ら)は、当然のようにお祝いの宴会を準備していたのですが、村山聖は「クリーニングへとりに行かないと」とかなんとか煙に巻いて一人帰り、村山抜きで祝宴をしたといいます。そのいいかげんな理由がコミカルですが、思えば、あのとき、村山さんは癌を患っていることがわかって、手術の準備をしていたんですね。その翌年の夏8月に村山聖は逝きました。
田村、村田、田丸、村山… なんてややこしいんだ。
各クラスの「順位戦」が行われています。C2クラスに僕がこっそりと応援している棋士がいます。村田智弘五段と田村康介六段です。なぜか。 この二人はすでにこのブログの将棋記事のなかに登場しています。でも「主役」ではなく、他の棋士の「引き立て役」として。だから僕は、彼らに活躍してほしい、彼らが活躍したときに彼らの記事を書こう、と思っているのです。
村田智弘五段は、上野裕和五段の記事で登場してもらいました。女流棋士の村田智穂さんと兄妹なのだそうですね。今期順位戦、3勝0敗です。
田村康介六段は、長沼洋七段の記事で書きました。田村さんも順位戦は3勝0敗。しかも今期はいまのところ14勝3敗、勝率全棋士中第2位と絶好調! というわけで今日は田村康介六段の話題。
田村康介六段は大内延介門下で、31歳。
同門に鈴木大介八段がいます。以前紹介したことのある瀬川晶司四段の本『泣き虫しょったんの奇跡』の中に、瀬川さんの部屋の中で、田村と鈴木がケンカするシーンが描かれています。まだプロになる前の、奨励会時代のエピソードです。
田村「そんなヘボ将棋やめて、遊びに行こうよ」
鈴木「ヘボ将棋とはなんだ!」
田村「ヘボだからヘボっていってんだよ」
鈴木「それが先輩に対する口の聞き方か!」
結局そのあと、周囲に諌められてケンカをやめ、6人でトランプ「大貧民」をやり、夜は雑魚寝をして、翌日は皆で競馬に行くのであるが。
田村六段といえば、「早指し」。
たとえば今期順位戦。順位戦の持ち時間は各6時間もあります。二人がそれを目一杯使うと、朝10時から始めた対局が、夜になります。(あいだに食事休憩がある) ところが田村六段の対局は、早く終わります。田村さんが「早指し」だからです。今期も、田村六段の消費時間はだいたい3時間(つまり半分しか使っていない)で、それで3連勝です!
彼がプロになりたての頃、順位戦の日に、大阪で対局しているはずの田村六段が東京の将棋会館にいるので「なぜ?」と聞いたら、「もう対局を終えて帰ってきました」というエピソードにも笑いました。
でも棋士の早指しは、ふつうはほめられたものではありません。棋士は将棋を指して「対局料」をもらって生活しています。ですから一生懸命時間一杯頑張って、全力を尽くす… それが、一般的な棋士の美学となります。
ですが田村康介はちがいます。彼の「美学」は、「なるべく時間を使わずに勝つ」なのです。だから、たぶん、ほんとは3時間だって彼にしたら「使いすぎ」なのです。
こういう棋士がいてもいい、と思います。他の棋士とは違う「美学」の棋士というのは、その個性自体が「宝」ですから。しかしその「宝」も、勝ってこそ輝く、それが棋士という仕事。
今はなくなりましたが、テレビ東京の「早指し将棋選手権」という棋戦がありました。10年前にそのTV将棋で、僕が観た田村康介という男、これが面白かった。まだプロ2年の田村が10年選手のように堂々としていました。
相手は田丸昇八段でした。その将棋は1手30秒(20秒だったか?)ですが、「早指しの田村」は2、3秒しか使わない。田村、優勢。考える、田丸八段。田丸が指すと、また2、3秒で田村は指す。そして、タバコをくわえ、ちらり、と田丸を見つめる…。その顔が、「かんがえすぎですよ、田丸さん、早く指しましょう」と言っているように僕には思えた。顔でベテランにプレッシャーをかける男、田村。
田丸さんは粘ったが、田村の勝利。 田丸は「サンドバッグでした…」と感想で語った。
NHK杯戦でも昔は指しながらタバコを吸っていたそうですが、今は見ません。この対局は準決勝で、田村康介(当時は四段)は決勝に進みました。決勝の、田村の相手は、A級棋士村山聖八段。おお、村山と田村の決勝か…! 僕はわくわくしたことを憶えています。
決勝は村山聖が勝ちました。(田村さんと村山さんとは気が合ったそうですね。) 解説や読み上げの棋士(先崎学、高橋和ら)は、当然のようにお祝いの宴会を準備していたのですが、村山聖は「クリーニングへとりに行かないと」とかなんとか煙に巻いて一人帰り、村山抜きで祝宴をしたといいます。そのいいかげんな理由がコミカルですが、思えば、あのとき、村山さんは癌を患っていることがわかって、手術の準備をしていたんですね。その翌年の夏8月に村山聖は逝きました。
田村、村田、田丸、村山… なんてややこしいんだ。