はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

ヒゲの九段のA級順位戦PART4

2007年09月25日 | しょうぎ
 さて久々の<ヒゲの九段のA級順位戦観戦記シリーズ>、今日は故・花村元司 九段にスポットを当てて。僕がこの時期の朝日新聞の観戦記に魅了されたのは、一言でいえば、「妖怪老人たちの面白さ」にやられたといっていい。とくに、東公平さんの升田幸三観戦記に脇役として出現する花村元司の「明るさ」がたまらない味であった。この明るい、つるっぱげの老人が「東海の鬼」などと呼ばれていたというから、少年の僕に、「なんだろう、この人は?」と強烈な印象を残したのである。
 花村さんはこのブログ内でも、時々、やはり脇役で登場してもらっている。  →こことか(「ハゲよりヒゲが上かなあ」)  →こことか(森下卓九段は花村門下)

 図中の「しょんないしょんない」というのは、花村さんの口癖だ。ハゲ頭をつるりとなでながら、こういって笑うのである。この言葉、ブログ検索してわかったが、いまも使われている東海地方の方言のようですよ。


〔升田幸三九段-関根茂八段戦〕
 並んで指していた花村と大友の将棋は…(中略)…中飛車側の花村が穴グマ囲いをし、それだけならめずらしくないが、△9二香、△9一玉、△8二銀、△8一桂、△7一金という守備陣にしてある所へ△7二飛と振ってきて、いわばソデ飛車戦法の味で大友の玉頭をおびやかしていた。升田と花村、交代にのぞき見しながら、お互いに何かいいたいのを我慢している。少しずつ緊張がほぐれてくる。
  升田「牛若丸だな、花ちゃん」
  花村「攻める穴グマ戦法だ」
  大友「なにをいってる!」
 カッとなったふりをして大友が着手。ピシッとコマ音がひびく。
        (注:大友昇は郷田真隆九段の師匠→6月26日記事
 ↑
 花村のこの指し方は、今ではポピュラーだが、当時(昭和40年代)はまだめずらしかったようだ。(穴グマ自体が少なかった)


〔升田幸三九段-原田泰夫八段戦〕
 花村八段が観戦に来ており、投了と同時に原田をかばっていろいろ意見を述べはじめた。
 「なに? そんな手があるもんか!」
 ごきげんのヒゲ九段は原田ではなく花村を相手どって感想戦をはじめ、読みの深さを披露し、花村があきれて「診察終わり」といって退散しようとした。
 「ボウズに診察されて、たまるか」とからかって一同を爆笑させた。


 この、花村元司が、深浦康市の師匠である。深浦さんはタイトルを獲れるのだろうか。ちなみに、師匠の花村さんは、名人戦をふくめ4回タイトル戦に出ているが、タイトルは獲っていない。深浦さんも、森下卓も、花村さんから直接に、御徒町将棋センターなどの場所で将棋を教わっている。花村さんの将棋は「妖刀」と呼ばれていたが、弟子には、正面からぶつかっていくような「王道」の将棋を指すように望んでいたようである。「妖刀」ではタイトルは獲れない、と自覚していたのかもしれない。

 羽生さんとの王位戦7番勝負最終局は、今日からはじまっている(二日制)。
 後手番になった羽生はゴキゲン中飛車の連続採用、深浦は穴グマにもぐり、囲いを完成させる前にしかけました。
 さあ、どっちが勝つとおもいます?
コメント
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