はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

ちゅう太(上野裕和五段)

2007年04月26日 | しょうぎ
 将棋名人戦第2局、またまた森内名人、出血サービス! 鼻の下から髭剃りによると思われる血が…。これは森内名人の、新しいキャラづくりかい? やるなあ。
(それを伝えた毎日新聞の記事をいまさがしてみたがみつからない。削除されたか? そりゃ受け狙いの記事だもんなあ。)

 勝負のほうは郷田真隆が勝って連勝です。 モリウチ、ピーンチ!!

 上野裕和五段を描いてみました。なぜ上野五段を? 

 名人戦が終了して7月になると、「順位戦」がはじまります。各棋士はそれぞれのクラスのリーグで順位戦を戦います。一番下のリーグが「C級2組」で、この中には約50人の棋士がいます。1年をかけて(総当りではなく)10局指して、成績の良い上位3名が「昇級」して上のクラス(C級1組)へ行きます。50人の中で3人ですから相当の好成績でないと上がれません。全勝ならば文句なしですが、7勝3敗ではだめ、8勝2敗でもむつかしい場合が多い。
 3月になるとその決算となる「最終局」が行われ、毎年ドラマが生まれます。棋士にとってはきびしい季節ですが、ファンにとっては楽しみの季節。その様子を将棋雑誌は伝えます。僕は「将棋世界」で記事をよみました。

 上野四段は2000年にプロ四段になり2001年度から順位戦C級2組に参加しています。そして6年目のことし3月、ついに昇級のチャンスをつかみました。9局をおえて8勝1敗。あと一つ勝てば9勝です。
 ところが、今シーズンのこのクラスは同じ8勝1敗のものが4人いました。この4人が全員最終局を勝って9-1で並んだらどうなるのか。さきに述べたようにあがれるのは「3名」と決まっています。
 その場合、上野四段が上がれないのです。
 理由はこうです。同じ勝ち星の場合、その前年の成績が良いものから昇級する、という決まりだからです。そうなった場合、上野四段は「四番手」になるのです。
9-1という成績ならば大抵は昇級できるのですが、できないこともある。そこはもう「運」なのです。このように同じ星で昇級をのがすことを「頭ハネ」と呼びます。せっかく9コも勝ったのに… でも来年度からはやりなおしになるのです。

 さて、じっさいはどうなったか。対局日は3月6日。
 まず上野は勝った。これで9勝。しかし昇級できるかどうかは残りの3人の昇級候補の成績しだい。まだ対局中だ。この中の一人が負けると、上野四段の昇級が決まる。「キャンセル待ち」だ。
 「将棋世界」誌は伝えている。19時46分、広瀬が勝つ。昇級だ。
 上野、広瀬の勝利を知ったこれも昇級候補の片上が夕食時に険しい顔をしていたそうだ。しかし、その片上も22時16分、勝って昇級決定。さあ、昇級ワクはあと1つ。上野四段はどうなるのか。
 深夜になった。あとひとりの村田四段はまだ戦っている。村田が勝てば昇級。そのとき上野は「頭ハネ」となる。盤面は村田優勢とみられていた。「もうだめだ」と上野は思った。村田の相手の村山も「まけだな、でもがんばろう」と思っていた。そこで村田がまちがえた! 一手のミスで村田の手中にあった勝利がするりとこぼれ落ちた。
 そしてその瞬間、ちゅう太、上野裕和四段の昇級が決まったのだ。

 「将棋世界」のその記事には、こう記されている。
 「午前1時をとうに過ぎた。結局最後まで検討に加わっていた上野が放心というか虚脱というか、心ここにあらずといった体でひざを抱えこんでいる。青ざめた表情で悄然とうなだれる様は全力を尽くした人だけがたどりつける境地なのであろう。」
 そして「今シーズンの途中には最愛の母が癌で他界するという不幸に見舞われた。」とあった。それでおもいだしたことがある。

 僕は神奈川県に住んでいた時期に、何度か、厚木で行われていた名人戦解説会へ行ったことがある。あれは2001年、丸山忠久と谷川浩司が戦っていた名人戦だった。解説者は鈴木輝彦七段、聞き手は中倉宏美女流。来ているひとはおっさんばかり。中倉さんが美しい…。いや、女性の客が一人いた。僕のすぐナナメ前に40歳くらいの美人が。やはり女性の客はめだつ。将棋、わかるのかな…。
 始まる前に、主催者からある青年の紹介があった。それが上野裕和四段だった。プロ棋士になったばかりで、厚木の出身だという。上野四段はこの日は「大盤操作」のしごとに来たのだった。これは、大きな解説用の将棋の駒を解説者の説明に応じてうごかす、プロの卵のアルバイトだ。毎年、名人戦の季節にはまだプロではなかった上野くんが、このしごとを引き受けていたようだ。その上野くんが四段になった。つまりプロ棋士になった。大盤操作のアルバイトももうこれが最後だ。
 厚木のおじさん達の前で、上野くんは立派にプロになった喜びの挨拶をした。拍手のなかで花束が送られた。僕のナナメ前の女性が目をきらきら輝かせて拍手をしていた。そのときに僕はわかった。「ああ、彼女、上野四段のおかあさんだったか」 そりゃあうれしいよな、と思った。

 僕は上野四段の昇級の記事をよんで、あのお母さん(と思うんだけど)のよろこぶ顔を思い出したのでした。
 上野四段の通算成績は大体勝率5割。この勝率で昇級できたというのは、ずいぶんつよい「運」をもっていると思う。おめでとう、上野四段。いや、昇級して、今は五段だった。
 上野裕和五段のブログ → 「ちゅう太のつぶやき
 なんで「ちゅう太」なん? それがニックネーム? ねずみの「ちゅう」?

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