僕がちいさい頃、父は写真を撮るのが趣味で、現像のための暗室をつくっていた。もともとはその暗室は風呂場で、五右衛門風呂の釜の上に板を置き、それを作業台にしていた。中は土壁の匂いがした。
その匂いを嗅ぎながら、僕は白い印画紙の上にゆっくりと画像がうかんでくる魔法をみていた。
できあがる写真はすべて家族のスナップ写真だった。父の性格には芸術家の気質はなく、ただカメラというメカが好きだったのだ。
その匂いを嗅ぎながら、僕は白い印画紙の上にゆっくりと画像がうかんでくる魔法をみていた。
できあがる写真はすべて家族のスナップ写真だった。父の性格には芸術家の気質はなく、ただカメラというメカが好きだったのだ。