経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

デフレ経済と知的財産・その2

2010-09-15 | 知財一般
 日経電子版の「減る『中流』、増える『下流』」という記事に、ちょっと恐ろしくなる数字が紹介されていました。

■1世帯あたりの平均所得の中間値 550万円(1995年)⇒ 427万円(2008年) ・・・22%減
■所得400万円未満の世帯数の割合 34%(1995年)⇒ 47%(2008年)
■世帯人員1人当たり平均所得 226万円(1996年)⇒ 208万円(2008年) ・・・8%減
■所得1000万円以上の世帯数の割合 19%(1996年)⇒ 11%(2008年)

 このように消費者の購買力の低下は明らかであり、中高所得者層をターゲットにする百貨店の苦境が続き、SPAやドラッグストア、100円ショップが躍進するのは必然である、と。こういう数字を見ると、日本を蝕むデフレの深刻さ、今の日本経済の抱える問題が単なる好不況の問題ではないことを痛感せざるを得ません。ここからは、商品やサービスの魅力に欠けるから消費が活性化しないというのではなく、買いたくても買えない状況が進行しているという状況が読み取れます。この記事によると、流通業者が集客力を高めるためには、消費者の所得減少に合わせて商品価格を引き下げるしかない、とのことです。
 この数字は家計部門に関するものですが、企業部門、BtoBのビジネスにも影響を与えないはずがありません。こうした状況下では、知的財産の保護の強化といっても、そもそも買い手がついてこれなくては意味が薄れてしまうわけで、やはり前回も書いたように、需要喚起、脱デフレといったマクロの観点からも、知的財産の利用促進、脱囲い込みといった発想が求められることになるのでしょう。デフレから脱却するためには、保護云々の前に、新市場の創造・拡大によってお金の廻りをよくすることが求められるので。
 尤も、各々のプレイヤーからしてみると、リスクをとる以上、自社が持つ知的財産権の効力にも頼りたいところです。ただその活かし方は、排他的なものというより、ちょっと抽象的になってしまいますが、市場拡大を優先させながら自社に有利なポジションを形成するための道具として活用する市場が拡大すればその果実を自社に誘導できるスキーム作りに利用する)、という感じになるのではないでしょうか。そういう意味では、「発明のコモンズ」で幡鎌先生が提唱されている‘元祖権’というのは、脱デフレという観点からも興味深い考え方であるように思います。知的財産制度を考える際には、経済環境の変化も当然に考慮されるべきで、古典的な考え方に縛られる必要はないはずですから。


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