経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

ニッポンの底力

2011-06-13 | 知財一般
 あっという間に2週間も経ってしまいましたが、先月の26~27日にベトナム・ホーチミンシティで開催された日本-ASEAN知財協力事業のワークショップに参加してきました。これまでにも日本の特許庁からは、ASEAN諸国の特許制度等の整備に様々な協力を行っていますが、今回のワークショップは知的財産制度をいかに中小企業振興に役立てるかというところにスポットを当て、ASEAN諸国からは知財庁・中小企業庁・商工会等の中小企業団体から各1名が出席して情報交換をするというものです。日本側からは、知財面における中小企業支援策を説明するとともに、知的財産制度を有効に活用している中小企業の事例を紹介しましたが、事例紹介のセッションをエルムの宮原社長とご一緒に担当させていただきました。
 今回データを見て初めて知ったのですが、ASEAN各国の特許出願の状況をみるとどの国も殆どが外国企業の出願で、ASEAN主要国ですら国内企業の年間の出願件数は数百件~1,000件強しかないそうです。因みに、日本では中小企業だけでも年間3~4万件の特許出願がありますから、その差は歴然です。勿論、特許制度を整備することによって外国資本による投資が促進され、各国経済の成長にプラスになることに大きな意味があるわけですが、こと現地資本の企業の育成という点に関しては、とても特許制度が活かされている状況とは言えそうもありません。知財関係者より中小企業関係者のほうが多かったということもありますが、各国のプレゼンからも中小企業振興という目的意識が強く感じられるました。
 それにしても、こうした数字の違いを改めて見てみると、日本という国がかなり特異であることに気付かされます。JETROの方のお話によると、アジア諸国の政策担当者等が、日本全国に張り巡らされた知財の相談窓口と相談に対応できる人材の数によく驚いているそうですが、考えてみると、その相談窓口を訪れる中小企業が全国に存在し、年間3~4万件もの新しいアイデアが創出されているというのは凄い話です。アジアで強烈な存在感を示している韓国でも、おそらくこういった厚みは存在しないでしょう。昨今、日本経済というと暗い話ばかりですが、このように独自の技術を持って地域で頑張っている企業が数多く存在しているということ、究極の分散系というか、全国アメーバ経営というか、こういったユニークな中小企業の層の厚さこそが日本の特徴であり強みなのではないでしょうか。産学連携・大学発ベンチャーとか、シリコンバレーモデルとか、異文化のよい部分を取り入れることも大切ですが、地域の中小企業の強みを磨くという成長モデルを忘れてはいけません。また、ASEAN諸国等への国際協力についても、知的財産制度の整備の次には、知的財産制度を絡めた中小企業振興というメニューを提供していける可能性があるのではないでしょうか。
 もう一つ感じたことは、ASEAN諸国では「知的財産=ブランド」というイメージが強いということです。どの国でも、商標の出願件数が特許を相当上回っている他、ベトナム地元企業のプレゼンもいかにブランドを認知させるかというテーマを意識したものでした。確かに、現在の各国の状況だと、国内での売上を伸ばしていくためには、技術に裏付けられた機能の差異というより、多くの人に知ってもらうことが成功要因となるような印象です。ASEAN諸国での知財のあり方を考える際には、このあたりの感覚の違いも意識しておいたほうがよさそうです。


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