経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

「中小・ベンチャー企業の知的財産活動に対する支援と課題」の一部をご紹介

2015-06-18 | 知財一般
 先週の話になりますが、6月10日・11日の特許ニュースに、座談会「中小・ベンチャー企業の知的財産活動に対する支援と課題」が掲載されました。
 元キヤノンの丸島先生、弁護士の林先生、特許庁普及支援課長の松下様と、中小企業向けの支援施策を中心にしながらも、約3時間の議論では知財に直接関係しないテーマにも話題が広がりました。断片的になってしまいますが、以下に私の発言の一部を紹介させていただきます。

<中小企業支援施策について>
施策を論ずるときには「中小企業」を全部一まとめにしてしまっていることが多いですが、その中には世界最先端の商品を持って、いわゆるグローバル・ニッチトップで、世界トップシェアを巡って争っているような中小企業もある。こういう中小企業に対しては、先端の知財戦略とかマネジメント・システムを提供してサポートをしていくという支援が必要なのはそのとおりです。
 しかし、世の中の大半の中小企業はそうではないです。下請けでずっと仕事をしているけれども親会社が海外に行ってしまってどうしようとか、特にこれといった特徴はないけど地域で地道に仕事を引き受けて成り立っているとか・・・そういう会社に、オープン・クローズ戦略とか、海外での模倣対策とか言っても、ほとんどの会社はピンとこないです。
 ですから、世界で戦っていくグローバル・ニッチトップになるような中小企業と、地道な仕事で地域経済を支えているような中小企業は分けて議論しなきゃいけないと思うのです。


※ 以前に「地域密着型中小企業の広義の知財活用促進について」のエントリにも書いたとおり、グローバルニッチトップ型の中小企業のみを念頭に置いて、知財活用→競合他社を排除→積極的な知財権行使、と直線的に決めつけるのではなく、中小企業の多様性を考慮した施策が必要と思います。

<米国とのベンチャー投資環境の相違について>
私も4年ほど投資を担当しましたけれども、ベンチャーキャピタル側からしてみると、買ってくれる人がいないベンチャーの株に投資しても商売が成り立たないわけです。日本もアメリカみたいにベンチャーに思い切ってお金を出せるようにするためには、ベンチャーが大事だと言う人は、他人事みたいに言ってないで、マザーズやジャスダックに上場しているベンチャー企業の株を買ってください。買ってくれる人たちがいれば、ベンチャーキャピタルだって売れるものは仕込む、つまりベンチャー企業に積極的に投資するようになります。

※ ベンチャーファイナンスの経験を踏まえての持論なのですが、ベンチャーを知るには自ら投資してみるのが一番。上場企業の中にも「ベンチャー」はたくさん存在しています。

<金融機関と連携した知財支援について>
どうしても我々は知財の方にいるから、知財があるのだから銀行も理解してよ、という流れで話をしているのですけれども、銀行には銀行の立場があるわけですから、何で知財を見るのよ、見てどんなメリットがあるのよと、彼らのしたいことを考えることも大事だと思うのです。
 いま銀行は何がやりたいかと言ったら・・・顧客との関係強化に知財がうまく使えるというのを示せば、彼らにしてみれば使う意味が出てくる。


※ このテーマに限った話ではありませんが、一方のニーズや社会的意義だけで物事はなかなか動きません。知財と金融の融合を実現するためには、金融側のニーズにもどらだけ応えられるかがキーになると思います。

<行政へのお願い>
この業界にも勉強したことを現場で活かす機会が不足していてうずうずしている若い人がいると思うので、その人たちが実際に企業に接して・・・機会を、行政として作っていっていただければと思います。これは乱暴な言い方ですけれども、支援メニューのこれがいい、あれがいいというのは実はそんなに大きな問題じゃなくて、いろんな人が現場の経験を積めるようなきっかけを行政の方が作ってくだされば、そこで人が育っていけば、それが一番効果として大きいのじゃないかなというふうに思っています。

※ 中小企業の多様性を理解することは重要ですが、だからといってそれぞれの性質やニーズに応じた支援メニューを設けるといっても限界があることは否めません。結局のところ、その隙間は人の力で埋めていくしかないので、支援メニュー以上に人材が鍵になるのではないでしょうか。


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