経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

IPセラピー

2006-11-28 | 企業経営と知的財産
 ベンチャーキャピタルで投資業務をやっていた頃、「どうやって社長室に入り込むか」ということが仕事上の重要な課題になっていました。社長に少しずつ信頼していただけるようになると、何てことはない四方山話のために時間をとっていただけるようになったりもします。そのときに思ったことは、社長業とはたいへんなストレスのかかる仕事なので、あまり具体的な業務に関する話しではないにしても、社外にいて直接的な利害関係の薄い人間と「こんな感じでいいよね」と確認する時間というのは、忙しい社長にもそれなりに意味のある時間なのだということです。当時の上司と、ベンチャーキャピタリストにはセラピスト的な能力があるといいかもしれないね、などと話していたものです。

 ベンチャー企業では、知財業務が社長直轄であるというケースが結構多いのではないでしょうか。こうした場合の知財支援で第一に心がけるべきことは、「社長に知財の制度を理解してもらう」ことではなく、「社長に安心して事業に打ち込んでもらう」ことなのではないかと思います。知財業務というものにはどうしてもリスクはつきものなので「リスクは排除してあるのでご安心を」というわけにはいきませんが、「社長の意向をこういうふうに理解し、こういう考え方で知財業務を進めている」というシナリオを社長が納得できる形で示せることが、何より必要なのではないでしょうか。

注)タイトルに使った「セラピー」の語義は、正確には「心理療法」といった意味になりますが、もちろん「心理療法」だけで知財業務が進むわけではないので、実務の裏付けを伴うことが大前提ではあります。