経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

肝心のお客様は何を求めているか。

2006-11-20 | 書籍を読む
 昨日に引続き、「サントリー・知られざる研究開発力」からです。伊右衛門の開発経緯の中で、こういう話が非常に印象に残りました。
 それまでサントリーが緑茶飲料で苦労してきた原因について、これまではシェアトップの伊藤園やキリンの「生茶」にどのように対抗するかという意識が強かったことを振り返り、「競合他社ばかりを意識した開発発想になっていて、肝心のお客様が今、どんなお茶を求めているのかという発想が希薄になっていた」と考え、顧客ニーズという原点に戻って伊右衛門の開発に取り組んだとのことです。このことは、どの業界でも陥りやすい罠なのではないでしょうか。

 我々弁理士、特許事務所の事業環境もいろいろ難しくなってきていますが、ついつい他の弁理士、他の事務所とどう差別化するか、ということに意識がいってしまいがちです。しかしながら、他と違うかどうかということ自体が本質なのではなく、クライアントのニーズに応えられるかどうかということのほうがより重要な問題でしょう。差別化ということを意識しすぎると、必ずしも顧客ニーズと一致しない方向で差別化しようと頑張ってしまうことが少なくないように思います。
 個々人レベルのスキルアップにしても、「これからの弁理士にはこういう能力が必要だ」という世間の風潮に流されてお勉強を進めたところで、将来それを本当に活かせるかどうかわかりません。それよりも、顧客ニーズに応えきれない部分を補うためには何が必要かを自ら考え、必要なスキルを補っていくことが王道なのではないでしょうか。

サントリー 知られざる研究開発力―「宣伝力」の裏に秘められた強さの源泉
秋場 良宣
ダイヤモンド社

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