2016年7月30日(土) 珍しい植物 2 バオバブー続続き
先日、下記記事
① 珍しい植物 2 バオバブ (2016/7/7)
② 珍しい植物 2 バオバブー続き (2016/7/19)
を投稿し、バオバブの種類や、地球上の分布、植物としての特徴や、現地住民との関わり等について採り上げている。
前稿の記事②に対して、世界遺産に詳しい知人から、以下のコメントを貰ったことが切っかけで、新たに調査して分った事項があり、これらを纏めて、続続編としたのが、本稿である。
コメント:世界遺産ソコトラ島
ソマリアーイエメンの間ソマリア沖にある世界遺産ソコトラ島はバオバブの生育する島。
ソマリア海賊が出没する海域にある島です。
海賊達は上陸して、実を食べたのでしょうか。
○ ソコトラ島
◇概況
ソコトラ島は、世界地図上で、足の形に見えるアラビア半島の、踵の部分になるイエメンの、沖合のインド洋にあり、埼玉県程の大きさで、イエメンに所属しているようだ。 インド洋航路(往時の海のシルクロード)上の要衝でもあり、ソマリア海域には、現在も海賊が出るようだ。
この島には、独特の自然環境と生態系があり、アフリカのガラパゴスとも言われ、学術的な面から、2008年、ユネスコの世界自然遺産に登録されている。
珍しい動物、植物、自然景観などで、観光地としても人気が高いようだ。
ソコトラ島の位置(ネット画像)
◇ユニークな植物
・竜血樹
ユニークな植物として、特に著名なのが、竜血樹である。
異様な形状に加え、樹 皮を抉ると、赤い血の色をした樹液が出るようだ。これから採取する樹脂の「竜血」は、古来、島の主要な特産品で、薬品、塗料、化粧品等の材料として、取引されているようだが、近年は、観光地化もあって、採取量が過剰になり、個体数が減少傾向という。ここでは、これ以上の詳細は省略したい。
竜血樹(ネット画像)
・ボトルツリー
ソコトラ島の、もう一つのユニークな植物は、ボトルツリー(Bottle tree)だ。
幹の下部の形状が、正にボトル(日本流なら、徳利)のようで、上部に枝がある。太った幹の内部には、多量に水を蓄えているようだ。(下図) これまで見て来た、アフリカのバオバブと可なり似ている。
土壌の少ない荒れ地だけでなく、切り立った崖の岩場などに貼りついていることもあるという。
季節になると、鮮やかな赤桃色の花を付けるようで、「砂漠のバラ」との別称がある。
ボトルツリーの異形 砂漠のバラが開花
このボトルツリーは、植物分類上は
キョウチクトウ科 アデニウム属
になるようだ。
日本国内では、これを基に育成されたものが、多肉植物(根塊植物)の園芸品種で、赤い花が素敵な、アデニウムとして販売されているようだ。(下図)(アデニウムとは - 育て方図鑑 | みんなの趣味の園芸)
園芸種 アデニウム
○ 世界のボトルツリーとバオバブと
◇オーストラリアのボトルツリー
やや、紛らわしい話だが、ボトルツリーという植物は、オーストラリアにもあるようだ。 北東部のクイーンズランド州から、東海岸一帯に分布しているようで、市内の公園等でも良く見かけるようだ。(下図 ネット画像より)
公園内のボトルツリー(ブリスベーン)
植物分類上は
アオギリ科 ブラキキトン属
になるようで、オーストラリアの東海岸一帯に20種、ニューギニアに1種という。この中で、幹の下部が肥大するのは、ルペストリスという種という。
◇ オーストラリアの原生種バオバブ
本稿冒頭の①記事で触れたが、バオバブには、アフリカから遠く離れた、オーストラリアにも、原生種1種があり、西オーストラリア州のキンバリー高原地域に自生しているようだ。
オーストラリアのバオバブは、植物分類上は、他の地域と同様、
アオイ科 アダンソニア属
で、固有種名は、グレゴリー/ギボーサと言うようだ。
現地では、Baobabuを短縮したように、Boab(ボアブ)と呼んでいるという。 姿形は、太っちょの、ずんぐりむっくりで、下図の様だ。(ネット画像より)
下図左は、上述のキンバリー高原地域のダービーという場所に生育している、往時、囚人を収容したとも伝えられるバオバブで、信じられない異形であり、樹齢1000年以上とも言われる。 下図右は、マダガスカルにある、同じ様な形のバオバブで、対比するために示したものだ。
ダービーの監獄のバオバブ マダガスカルの妊婦のバオバブ
地質時代には、ゴンドワナ大陸として、アフリカとオーストラリアは陸続きだったと言われるが、その生き証人であろうか?
◇アフリカのバオバブ
バオバブの原生種の中で、
・アフリカ大陸に生息する1種(ディギタータ)
については、前稿①、②で取り上げたので、詳細は省略したい。
又、
・マダガスカル島に生息する6種(グランディディエリ 他)
の中で、グランディディエリは、有名なマダガスカルのバオバブ・アベニューに林立する、姿形がすらっとして、天に手を広げたようなバオバブだが、①で紹介済である。
この、グランディディエリという種は、樹形が生育環境によって変異することでも有名のようで、乾燥した石灰岩土壌では、ズングリムックリな樹形になることが知られているようだ。
下図左、下図右は、マダガスカルの南西地域の風景であるが、グランディディエリの背が低くなって、ズングリムックリになったと言えるだろうか。
本稿で取り上げた、ソコトラ島のボトルツリーや、オーストラリアのボトルツリーは、マダガスカルの、これらのバオバブと、可なり形状が似ているだろうか。
◇ まとめ
本記事の冒頭で紹介したコメントでは、ソコトラ島のバオバブとあるのだが、正しくは、ボトルツリーとなるようだ。
でも、このような異形の植物は、植物分類上では、狭義には、それぞれに異なっているのだが、筆者には、大元は同じで、「広義のバオバブ」と言えるように思われる。
各地のバオバブやボトルツリーなど、異形の植物類をあれこれ見た後に、マダガスカルのバオバブ並木道の、下図のような、バランスのある整った風景に接すると、筆者には、ほっとするような美しさを覚えるのは、なぜか不思議でもある。
やや飛躍するが、富士山を見て、清々しい美しさを感じる感覚に近いだろうか。
バオバブの並木道