2017年2月11日(土) アメリカの産業 -農業
安部総理とトランプ大統領の、注目の日米首脳会談が、現地の10日(JSTの今日の早朝)に行われ、共同声明も発表された。この件については、改めて取り上げる予定である。
アメリカを知り、特に州を知る目的で、これまで、各方面からアプローチしてきたが、今回は、アメリカの産業の面から迫ることとし、農業の話題である。
○ アメリカの農業の耕地面積
産業の中で、地理的条件と密接に関係するのが農業だ。
世界の国々の中で、耕地面積の大きさと、国土全体の中に占める耕地面積の比率を見ると、主な国では、以下のようになっている。
対比するため、世界平均と、日本、G7メンバーのデータも示している。
国名 耕地面積 耕地面積比率
中国 514万km2 54.8%
アメリカ 408 44.6
オーストラリア 405 52.7
ブラジル 275 32.9
ロシア 214 12.7
カナダ 65 7.1
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世界平均 23.9 38.1
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フランス 28.8 52.6
イギリス 17.1 71.0
ドイツ 16.6 47.8
イタリア 13.7 46.6
日本 4.6 12.4
上表をみると、アメリカは、アラスカ以外は、殆どが温帯に属し、高地や砂漠や荒地も少なく、別格といえるだろうか。
中国も、温帯地域が多いが、西域の砂漠地帯や、チベットなど高山地帯もある。オーストラリアは、中央部は、荒れ地や砂漠の印象が強い。ブラジルは、熱帯雨林や湿地帯が多いだろうか。
又、ロシア、カナダは、国土は広大だが、寒帯地域がかなりの部分を占めている。
アメリカとカナダは別として、G7メンバーの欧州諸国や世界平均と比較してみると、日本の、耕地面積の狭さと、国土に占める比率の低さに、改めて驚かされたことだ。
○ アメリカの農産物
アメリカは、世界に冠たる農業国である。アメリカの農産物生産量が世界に占める比率は、以下のようだ。(2014/2013年統計)(中学地理・世界の農作物・統計資料 : なるほどの素 など)
農産物 世界順位 世界のシェア 他国
小麦 世界4位 7.6% 1位中国 2位インド 3位ロシア
トウモロコシ 世界1位 35.3% 2位中国 3位ブラジル
大豆 世界1位 35.0% 2位ブラジル 3位アルゼンチン
綿花 世界3位 11.6% 1位中国 2位インド
下図は、上記のアメリカの主要農産物等の、地域分布を示している。図中の、Xは、年間降水量が1000mm、Yは500mmを表している。又、Zは、西経100度の経線であるが、年間降雨量500mmの線Yと、おおよそ、一致している。
前稿でも触れたように、アメリカの地理的な平原の構成(グレートプレーンズ、プレーリー、中央平原)と年間降水量などから、図にあるように、おおよそ、この経線Zを境に、利用形態が変わるようだ。(地理B より引用)
Zの西側は牧畜地帯で、山岳地帯の高地や平原では、牧畜がおこなわれているようだ。一方、小麦の栽培は、主に、このゾーンでおこなわれている。
Zの東側は、畑作地帯で、グレートプレーンズから、プレーリーや中央平原まで、次項のように、各種農作物が生産されている。
○ 農作物の国内生産地の分布
●小麦
カナダからアメリカにかけて、生産されている小麦(春小麦、冬小麦)である。北部は、気候が厳しいため、暖かくなった春に播きつけ、南部は、気候が温暖なため、秋播きして越冬させるようだ。収穫量は、秋播きが多く、日本では、秋播きが普通である。
州で言えば、
春/春・冬小麦:ノースダコタ サウスダコタ モンタナ ワシントン オレゴン
冬小麦 :オクラホマ コロラド カンザス ニューメキシコ テキサス
下図は、アメリカの機械化農業を示す風景で、信じられないスケールの大きさだ。何の作業をしているところかは定かではないが、小麦収穫後の、整地作業だろうか。
(―自然農法に想う!― - 新プランター野菜栽培への誘い より)
●トウモロコシ
東のプレーリーから中央平原にかけてはトウモロコシで、コーンベルト(CornBelt)と言われる。 用途は、家畜用飼料が約40%、燃料用エタノールが約30%で、食用は多くないようだ。
州では、
アイオワ イリノイ ネブラスカ ミネソタ
で全米の41%、他に、ミズーリ インディアナ オハイオ などだ。
トウモロコシが、人間の食用ではなく、燃料用エタノールの原料になっているというのは、かなりの驚きだが、少し以前だが、世界的に食糧不足になった時、“人間と車と、どちが大事か”、と大きな話題になったことがある。
● 綿花
南部は、綿花栽培が盛んで、コットンベルト(Cotton Belt)と言われる。図の州では、
テキサス ルイジアナ ミシシッピ アラバマ ジョージア
だが、テキサス カリフォルニア ジョージアが、主要3州と言われる。図では、カリフォルニアは入っていない。
独立戦争当時の綿花栽培は、奴隷を使った手作業だったが、現在は、多くの作業が機械化されている。(下図左)機械で綿の実を収穫するのは結構面倒だろうか。(タオルリポート より)
上述のように、綿花生産量では、アメリカよりも、中国、インドが多いが、これ等の国々では、現在でも、人手による作業が多いように思われる。(下図右 ネット画像より)
綿花収穫(アメリカ) 綿花収穫(インド)
●先の図には、入っていないが、大豆も、アメリカの主要農産物の一つだ。州別では、下図のような状況だ。数字は、国全体に占める比率である。
州では、主要な所は、
アイオワ イリノイ ミネソタ インディアナ ミズーリ オハイオア
で、上位4州で全米の44%、上記6州で58%を占めている。
● 酪農
図にあるように、五大湖周辺からニューイングランドにかけては酪農が盛んである。家畜として、牛、豚、鶏などを育成し、ミルクや肉を生産している。
州では、
ミネソタ ウイスコンシン ミシガン オハイオ ペンシルバニア ニューヨーク
などだ。
一頃、BSE問題で、日米間の大きな争点となった、米国産牛肉の生産・加工も、この地域だろうか。
●その他
図にあるように、以下のような農業も行われているようだ。
東海岸 園芸農業 : 花卉
フロリダ 亜熱帯作物 : パイナップル バナナ
カリフォルニア 地中海式農業: オレンジ ぶどう オレンジ 米
カリフォルニアでは、海岸線と並行しているシエラネヴァダ山脈の関係で、雨の少ない地中海性気候の地域があり、砂漠もある。
○ 農作物の集散や加工工場
農作物の集散地や食品加工工場などは、産地の近さと輸送の利便性等が重要な立地条件だが、適当なデータは見つからなかった。
ただ、イリノイ州のシカゴには、食品関連工場が多く立地していると言われており、大豆やトウモロコシなどを扱う商品先物取引所がある。
又、ミシシッピ川の沿岸に発展した、ミズーリ州 セントルイス周辺も、農産物の集積地になっているようだ。