ケイの読書日記

個人が書く書評

石持浅海 「彼女が追って来る」

2016-03-14 10:54:33 | 石持浅海
 以前読んだ『扉は閉ざされたまま』に、すごく似ているので驚いた。探偵役は碓氷優佳だし、倒叙ミステリで犯人は最初から分かっているし、しかも動機が、そんなことで人を殺すか?!というもの。
 二番煎じ感は否めないが、しかし、それなりに面白い。


 昔からの知り合いの経営者たちが集まる親睦会が、箱根のコテージ村で開かれた。
 愛する男を間接的に殺したという憎悪で、夏子は、元同僚の女性を刺殺する。元の同僚なので疑われるだろうが、決定的な証拠を残さなければ、逃げ切れる。そう考えて、下手なアリバイ工作はせず、犯行現場を後にする。
 しかし、翌朝見つかった死体は、夏子がまったく身に覚えのないカフスボタンを握りしめていた。
 いったい、誰が何のために握らせた? それとも、被害者自ら、死の間際に、そのカフスボタンを握ったの? どうして?

 そう、そのカフスボタン、当然のことながら、そのカフスボタンの持ち主が犯人でないかと疑われ、夏子にとっては願ってもない展開だが、自分が握らせたわけでもないカフスボタンがどうしてそこにあるのか、あらゆる可能性を考え、夏子の頭は混乱していた。


 それにしても、疑いの目が夏子に全く向けられないのは、ヘン。
 確かに、順当に考えれば(犯人を除いて)被害者が最後まで一緒にいたのが夏子なのだから、彼女が第一の容疑者であるはずなのに。

 それに、夏子は不審をいだかせる行動をとっている。メンバーは、1~7番までのコテージを各々割り当てられ、夏子は被害者のとなりのコテージになる。昔の同僚で仲が良かった二人だから、パーティがお開きとなり、それぞれコテージに帰る時に一緒に帰るのは、ごく自然なことで、腕を組みながら二人で一緒に帰って行った。
 だったら翌朝、集合場所に行くとき、連れだって来るのが普通じゃないかな?
 支度に手間取って一緒に来れなくても、一言ぐらい声をかけるよね。そして、他のメンバーに「彼女、少し遅れるそうです」と伝えるのが自然。
 まったく声をかけず、スタスタ自分だけで来るのは、女同士だとケンカしたのかしら?と勘ぐってしまう。

 実際は、死んでいるから声掛けしなかったんだし、自分が第一発見者になりたくなかったんでしょう。

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