ケイの読書日記

個人が書く書評

倉知淳 「こめぐら」 東京創元社

2019-11-07 17:15:12 | 倉知淳
 倉知淳のノンシリーズ短編を2冊同時刊行ということで、もう1冊の「なぎなた」の方は、もうすでに読んだ。うーーーん、この「こめぐら」より、以前読んだ「なぎなた」の方が出来がいいような気がするなぁ。だから、こっちの「こめぐら」にボーナス・トラックとして猫丸先輩の話が1話載ってるのか。バランスを取るために、などと出版社の思惑を想像してしまう。

 その中で印象に残ったのは『真犯人を探せ(仮題)』。バカミスといえばバカミス。なるほど、こういう構造のアパートがあるかもしれないね。でも犯人あて懸賞ラジオ推理劇場の話で、シナリオ形式になっており、読みやすいし、登場人物の性格が台詞にハッキリ表されているので楽しい。
 大喜びで事情聴取されるミステリオタクの公務員とか、妙に時間にキッチリしている植物園の飼育係とか、イヤに色っぽいホステスさんとか、こういう隣人がいると面倒だよね。
 私、バカミスという言葉は使わないようにしてるんだけど、先回読んだ小谷野敦氏が「このミステリーはひどい!」の中でバカミスを連発しているので、ついつい使ってしまった。気を付けます。

 一番出来がいい作品は、猫丸先輩が登場する『毒と饗宴の殺人』。有名写真家が賞を受賞したので開催されたパーティで、殺人事件が起こる。受賞者とパーティの発起人2人の計3人が、大勢の来客の前で、事前に用意されたカクテルをそれぞれ飲み干したら、受賞者が倒れ大騒ぎになった。カクテルの中に毒が入っていたらしい。
 容疑者は、カクテルを用意したボーイと、死んだ写真家と一緒に壇上でカクテルを飲んだ2人の発起人。
 ボーイが一番毒を入れやすいが、動機がない。発起人2人は、有名写真家の友人という事だが、同業者で彼の受賞を妬んでいた。しかし、もし発起人がカクテルに毒を入れたとしても、死んだ写真家がどのグラスを選ぶのかは分からない。ひょっとして無差別殺人???

 実は、有栖川有栖の国名シリーズ「モロッコ水晶の謎」にも、同じようなトリックがあった。私、それを読んだとき、えらく感心したんだ。なるほど、こういう事もあるのかって。
 あまりにも緻密に計算するより、この方が成功するんだろうね。

 『あとがき』は、結構なボリュームで、クスクス笑って読める。得した気分!!

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