本と旅とやきもの

内外の近代小説、個人海外旅行、陶磁器の鑑賞について触れていき、ブログ・コミュニティを広げたい。

同の字点

2021-09-26 08:24:04 | Weblog
 図書館から藤沢周平のエッセイ集『帰省』を借りてきた。ある時期、この作家の小説をよく読んだ。人情ものの短編集は車中や喫茶店の一休みにちょうどよい。

 名を覚えていないが、ある評論家がこの作家の繰り返し符号である「同の字点」を使わないことにいちゃもんを点けていたことがあった。例えていえば山々、家々、年々の(々)を用いないのだ。山山、家家、年年とするわけ。

 このエッセイ集でも「郷里の方方、少少の雨風、嬉嬉として」などがある。もっとあったかもしれない。とにかく、よほど字ではない符号がきらいらしい。
 
 もっとも引用文には手を加えない。文中の「清河八郎」という随筆にある清河の日記から引いた「人生豈碌々として市塵に亡びんや」には、ちゃんと「同の字点」のままだ。自身の小説では「碌碌」とするのだろうか。

 藤沢文学は好きだが、繰り返し符号になれているせいか、私も漢字の文字並び表記は字面がよくないと思う。