もう20年も前になるが、新宿のスナックで棋士の佐藤大五郎九段と隣り合わせになった。薪割り大五郎の異名をもつ豪快な気風である。ただ、将棋ファン以外に知られていない。
話しているうちに「私を講演に呼んでくれないか」と言われた。「中原さんや米長さんは30万円だが、オレ、半分の謝金でいい」ということだった。
それは実現しなかったが、店をでるとき「明日の産経新聞をみてくれ。加藤一二三に勝った最終譜だ」と言った。翌朝、産経新聞を買って棋聖戦の棋譜を見た。
彼はたしか独身だったかな。酒豪で女好きで夜な夜な盛り場に出没していたらしい。遊ぶカネはいくらでも欲しかったのだろ。
調べると、2010年9月1日に71歳で亡くなっていた。