本と旅とやきもの

内外の近代小説、個人海外旅行、陶磁器の鑑賞について触れていき、ブログ・コミュニティを広げたい。

日本語基礎講義(その11)

2009-02-21 12:48:54 | Weblog
 前回はいくつかレトリックの話をしました。その最後の畳語法で重言に触れて、これを今回の話題にすることにしました。

 さて、その重言ですが、もっともポピュラーなものに「後で後悔する」がありますね。後悔とは後で悔やむことです。それなのに、さらに「後で」を重ねて言う。畳語法的に「後、後悔やむ」ならばよいのですが、後で後悔は文章表現としては間違いです。

 よくみられる重言の例をざっと挙げれば「一番最初」、「二度と再び」、「ただ今の現状」「およそ1時間ほど」、「期待して待つ」、「未だ未達成」、「決心を決める」、「発売を開始する」、「伝言を伝える」いやァ、あるものですね。野球の実況放送を聴くと「後続が続きませんねぇ」とか「後ろへバックしました」とか「ここで得点を取りたいですねぇ」とか言う。そうそう「最後のラストスパートです」、「あッ、転びました。思いがけないハプニングです」と言うマラソン中継もありました。

 幸い、これらの重言は話し言葉にしか出ますから、文章上の欠陥になりませんが、つい、しゃべるように書けば、文に紛れ込むこともあります。
 では、どうして重言が話し言葉で頻繁に出るのでしょう。それは、話し手にとって口調がよい、聞き手には耳に残りやすいということです。
「ただ今の現状」を「今の状態」では言いにくいし、言い足りない感じにもなります。言われたほうも耳にもスーッと入りませんね。「一番最初」を単に「一番」や「最初」では調子が高まらない。類語の反復は言葉を強調でき、理解を深めるのに好都合です。こうしたメリットがあるのですね。しかし、何度も言いますが、文章ではいけませんね。

「引き続き講義を続行」したいのですが、いや、これは重言ですね。本日はお終いにしましょう。