本と旅とやきもの

内外の近代小説、個人海外旅行、陶磁器の鑑賞について触れていき、ブログ・コミュニティを広げたい。

あの事件

2009-02-02 09:44:30 | Weblog
 郷里に知り合いのお金持ちのオヤジさんがいた。週末ごとに上京して競馬場にやってきた。上京すると、付き合えと電話で呼び出されて馬場にお供したものだ。

 馬券の買い方が半端ではない。10万単位で、1レースに何十万も勝負する。
 ある日、府中競馬場に出かけた。オヤジさんは席に座って予想しては、これを10万、これを20万、これも20万といった具合に馬券を買って来いと言われた。
 当時は、特券といわれた千円券が上限だったので、10万ともなれば、馬券売場で特券100枚がトイレットペーパーのようにロール式になって打ち出していた。時間もかかり、売場のおばさんの横には立会人もいた。

 さて、馬券を手にしたその瞬間、二人の男に左右を挟まれた。
「これは、私のではありません。頼まれたのです」その二人をオヤジさんの席まで案内した。オヤジさんは「アヤがつくじゃないか」と怒った。
 ハイ、この二人は刑事。1968年、三億円事件が発生した。それで、競馬場の馬券窓口を監視して、馬券に大金を投じる若い男をマークしていたようだ。
「失礼しました」と刑事は引き上げた。
 当時、私も若かった。今は昔の話でした。