本と旅とやきもの

内外の近代小説、個人海外旅行、陶磁器の鑑賞について触れていき、ブログ・コミュニティを広げたい。

「すみやかに」

2006-08-25 17:01:03 | Weblog
 ある雑誌の文の一節に、「最終的に政府・与党合意は「NTTの組織再編問題は2010年の時点で検討を行い、その後すみやかに結論を得る」という文言に落ち着いた。」とある。
 そして、この文の筆者は、「すみやかに」とあるのだから、この合意により一安心であると言っていた。果たしてそうでしょうかね。
 
 時間的速度を表す法律用語に「直ちに」、「遅滞なく」、「すみやかに」がある。
「直ちに」が最も速く、最優先で取り組まなければならない。「…気象の状況が火災の予防上危険であると認めるときは、その状況を直ちに…通報しなければならない(消防法)」の場合、有無を言わせない、問答無用となりますわ。

「遅滞なく」は速度がやや緩和される。優先すべき正当性や合理性の理由があれば、その後回しでよいことになる。同じ消防法に「…火災を発見した者は、遅滞なく…通知しなければならない」と書き分けている。本来、火災発見者は直ちに通知するべきでしょうが、その発見者が、先ず逃げることに精一杯だったり、賊と格闘していたり、通知の手段がなかったりということがあるのでしょうね。

「すみやかに」は速くしろということに違いないが、訓示的に用いられている。つまり修飾語的ですから拘束力がない。もっと言えば、不当性や違反を問われない。
 述べたいことはお分かりのとおり「すみやかに結論を得る」といっても当てにならないわけですな。昔、自民党の選挙公約で「…これらをすみやかに実行します」とあった。まことに深慮遠謀ですな。だから、いまだに実行しないものがあるけど、これ、公約違反に問われないでしょうね。

 この時間的速度の用語は法制局の解釈、つまり立法の範疇ですが、司法は興味深い判決を出しました。これを次回に。