本と旅とやきもの

内外の近代小説、個人海外旅行、陶磁器の鑑賞について触れていき、ブログ・コミュニティを広げたい。

詩人 尹東柱

2006-08-11 21:00:03 | Weblog
「被告人を懲役2年に処す 未決拘留日数中120日を右本刑に参入す」
 昭和19年3月31日、京都地方裁判所が下した判決である。被告人は尹東柱(ユン・ドンジュ)朝鮮生まれの同志社大学の学生であった。
 判決理由は治安維持法第5条に該当とある。国体を変革する目的の協議、煽動、宣伝の罪であるが、要するに民族意識の昂揚に努めたことが特高の癇に障ったようだ。
 
 判決後、福岡刑務所で服役したが、翌年2月16日獄死。手元の資料には1914年生まれと1917年生まれとがあるが、いずれにしろ早い死である。敗戦の半年前であって、痛ましい。
 死因は脳溢血とされたが、同じく服役中の従兄宋夢奎(京都帝大生)によると、彼も自分も何か注射を打たれたと語っている。事実、宋夢奎も3月10日に獄死している。

 尹東柱は朝鮮語禁止の下で果敢にハングルで詩を創った。特高により処分されたものを多いようだが、いくつか残った。代表作『序詩』を挙げよう。

  死ぬ日まで天を仰ぎ
  一点の恥じ入ることもないことを
  葉あいにおきる風にすら
  私は思いわずらった。
  星を歌う心で
  すべての絶え入るものをいとおしまねば
  そして私に与えられた道を
  歩いていかねば。

  今夜も星が 風にかすれて泣いている。