golf130のクラシックお笑い原理主義

オッサンのしがない日常や妄想話とその日聴いた音楽。

矢代秋雄「ピアノ協奏曲」中村、若杉、外山

2009-06-29 20:15:39 | Weblog
(野口)「あ~ら、山田さんの奥様じゃありませんこと。一体どうされたんですの?」

(山田)「あ~ら、ビックリざあます、野口さんこそどうされたんです。クラシックのコンサートなんかにいらっしゃって。そういうご趣味お有りになりましたっけ?」

(野口)「(なにぃっ~!)中村紘子さんのピアノじゃないですか、これは是非とも聴かなきゃということで、お芝居のお誘いもお断りして参ったんざあますわよ」

(山田)「あたくしも、昔からピアノが大好きで、中村紘子さんのコンサートにも何回か来てるんですのよ」

(野口)「ピアノはどの辺りの曲がお好きですの?」

(山田)「リストとかいいですわ。『別れの曲』とか素敵ですわ」

(野口)「(『別れの曲』ってシューマンじゃなかったかしら?でも間違えると恥かくから止めとこ)そうですわね、『別れの曲』も素敵ですわね」

(山田)「ところで、今日のヤシロ何とかさんって人の曲ご存知?」

(野口)「(ドキッ)あ~ら、山田さんご存知ないでらっしゃいますこと?(へへへ、上手く切り返したわ)」

(山田)「いやあ、演歌関係の作曲家らしいから、野口さんなら良~くご存知かと思いまして。わたくし、そちら方面の音楽って良く分からなくって、おーほほほっ(これで1本取ったわね)」

(野口)「ヤシロさんって、演歌とかの人なんでしたっけ?わたくし、申し訳無いのですが、存じ上げておりませんで。山田さんはそれでこの曲を楽しみに来られたんですわね(ニタッ)」

満場の拍手で、演奏者が登場する。

(山田)(くそ~、野口のババア!)

(野口)(さあ、どんな曲かしら?中村紘子さんが演奏されるんだから、きっとロマンチックな曲よね)

ところが始まった音楽はいわゆる現代音楽。

(山田)(え~、何この音楽!)

(野口)(あ~ら、演歌とは全然違うわ。困っちゃったわねぇ)

第1楽章、現代音楽にしては意外にも美しい第1主題がピアノで提示される。

何とこれは12音技法によるものとのこと。

12音でもメロディが作れるんだ~!

その後、ピアノの激しい強打も続くが、フルートとピアノによる神秘的で美しい掛け合いも混ざる。

しかし、「難しい現代音楽」という先入観念が出来てしまったオバサマ2人にはそれは聞こえない。

(山田)(早く終わって欲しいわ、この音楽)

(野口)(山田の婆さん、頷きながら聴いているけど、解ってるのかしらこの音楽?)

12~3分が経過し、2人にとっては何とも長かった第1楽章が終了する。

ピアノが単音の同一音を繰り返す。

(野口)(あら~?、中村紘子さん、一体どうされちゃったのかしら。楽譜忘れちゃったのかなあ?)

(山田)(えっ、調律?ピアノ調子悪くなっちゃったんだ?それで、同じキーばかり叩いて確認してるんだ)

単一音でもメロディが作れるんだ~!

同じ音が執拗に繰り返される。

それが不思議なことにメロディに聞こえる。深い祈りの音楽。ティンパニーや弦、管も交え、崇高な美しい音楽が進んで行く。

それは、例えばショスタコーヴィチの大傑作、交響曲第4番とも通底するような深遠な音楽。ペルトと似た静謐さもある。

オバサマ達が呆気に取られている内に、8分強の第2楽章は終わる。

そして、バルトークやストラビンスキーをも思わせる力に満ちた第3楽章に突入。

(野口)(あら、また喧しい音楽が始まっちゃったわ)

(山田)(早く終わんないかしら)

2人の我慢がそろそろ限界に近づいた頃、ようやくこの曲が終わる。

会場の拍手で終曲を確認した山田さんは、意外な行動に出る。

「ブラボ~~!」と叫んでスタンディングオペレーション。(私の勝ちね!)

野口さんの「素敵な曲でしたね」という声は山田さんの絶叫にかき消された。

中村紘子(ピアノ)、若杉弘指揮東京都交響楽団(1977年録音)、外山雄三指揮NHK交響楽団(1982年録音)(SONY盤)

先日、図書館から借りた1枚。

矢代秋雄(1929~1976)のピアノ協奏曲を、伴奏を替えた中村紘子の2つの演奏で収録されています。

1977年録音の方が荒削りながら迫力あり、1982年録音では洗練と落ち着きを感じます。

いずれにしても、これは力感と深さを兼ね備えた素晴らしい傑作。世界に誇るべきピアノ協奏曲だと思います。

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