トラッシュボックス

日々の思いをたまに綴るブログ。

平山廉『カメのきた道』(日本放送出版協会(NHKブックス)、2007)

2008-01-07 23:17:00 | 生物・生態系・自然・環境
《私たちは地球生命の頂点に位置するのが人類と勘違いしていないか・・・。
 甲羅というシェルターとスローな生き方という
 第三の戦略を
 選んだカメたち》

という帯の言葉に惹かれて買ってみた。

 著者は早稲田大学国際教養学部教授。専門は化石爬虫類だという。
 「はじめに」でこう述べている。

《カメに関する本というと、ほとんどがペット動物としての飼育に関するものや、ウミガメの生態を扱ったもの、あるいは人間との関わりを文化史的に論じたものぐらいで、化石をベースに彼らの進化を論じたものは見たことがない。》

 で、著者がそれを書いてみたということらしい。
 化石のみならず、現存する亀の生態や、亀の体の仕組みの解説、人間と亀との関わり合いなど、記述は多岐にわたっている。文章は平明で、気軽に面白く読めた。

 進化論に対する有力な批判として、中間形質をもつ化石が発見されていないという主張があると、昔聞いた覚えがある。
 これは、亀についても当てはまるようだ。
 本書によると、最古の亀は、中生代三畳紀の中頃に現れたという。その亀は、原始的な特徴がいくつもあるものの、既に完全な亀の形態を備えているという。
 亀の甲羅は背骨や肋骨と一体化している。このような特徴は他の爬虫類はおろか、脊椎動物にも見当たらない。アルマジロやヨロイ竜(アンキロサウルスなど)のように装甲をもつ動物は他にもいるが、これらは皮膚を硬化させたものであり亀とは全く構造が異なる。
 ところが、甲羅を中途半端に発達させた亀(の祖先たる爬虫類)は、未だ発見されておらず、亀がどのような爬虫類を祖先として進化してきたかについては、現在でも論争が続いているという。本書では、この点について著者の自説が展開されており、興味深い。

 日本の亀としては、ニホンイシガメとクサガメが代表的だが、本書によると、クサガメは人為的に持ち込まれた可能性が高いのだという。

《化石はもちろんのこと、先史時代の遺跡からも出土しておらず、また古い文献を見てもニホンイシガメやスッポンの記述はあるのに、クサガメについては何も触れられていない。現生カメ類が専門の安川雄一郎さん(高田爬虫類研究所沖縄分室)によると、近世(おそらく室町時代末期から江戸時代初期)になって朝鮮半島から移入されたのではないかということである。》

 知らなかった。
 そういえば、カブトエビやダンゴムシのような身近な動物も帰化動物であると最近知った。
 現在、都会の公園の池で見られる亀は、外来種であるミシシッピアカミミガメ(ペットとして売られているミドリガメの成体)がほとんどで、私などは違和感を禁じ得ないのだが、もう数百年もすると、ミシシッピアカミミガメもクサガメのように在来種として扱われることになるのだろうか。


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