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共産党は破防法調査対象との答弁を印象操作と批判する大学教授の印象操作

2016-05-13 07:58:35 | 日本共産党
 前回までの一連の記事で取りあげた、政府が共産党を破防法の調査対象団体としている答弁書について、朝日新聞デジタルが運営しているオピニオンサイト「WEB RONZA」に、小林正弥・千葉大学大学院人文社会科学研究科教授(政治学)による「「左翼」の共産党を「極左」に見せる印象操作」という記事が掲載されていると朝日の紙面で紹介されていた。

 何が「印象操作」なのかと不審に思って、WEB RONZAで4月13日付の当該記事を読んでみた。「共産党は破壊活動を行う政党なのか?」という副題が付いている。
 この小林教授は、共産党が野党統一候補を立てるために独自候補を取り下げる動きを歓迎しているようで、

 これはもちろん、議会政治の中の正当な戦略だ。このような画期的方針を取るのは、危機にある立憲主義を守るためだ、と共産党は説明している。これまで共産党は自党の議席や得票のために実際に当選可能性はなくとも候補者を立て、大局から見れば党利党略だと批判されることもあった。

 筆者自身も、第1次安倍政権の時には「平和への結集」という概念のもとで平和のための統一候補を実現するように主張し、当時の「護憲政党」に対してそのような批判を行った。だから逆に今の共産党の方針は、自党だけの利益よりも立憲主義や民主主義の擁護という大義を優先しているように見える。

 その意味ではこれは、こうした大義のための自己犠牲的な戦略にすら見える。民主主義や立憲主義の観点からはこの歴史的大転換を賞賛することはあっても、これを批判することは難しい。

 そのため、理性的に政治的現実を見れば、今の共産党が「破壊活動」を行って虎視眈々と「暴力革命」を狙っているなどと想像することはできないし、そんなことを言ったら妄想だと一蹴されるだろう。


と述べているが、「印象操作」についての説明は、無料で読める記事前半部にはなかった。有料である後半部にはあるのかもしれないが、購読する意欲をそそられなかった。
 もしかすると、「印象操作」の語はWEB RONZAの編集者が付けたのかもしれない。

 しかし、小林教授の記事には

政府は鈴木貴子衆議院議員(無所属)の質問趣意書に答えて、政府は共産党を「警察庁としては『暴力革命の方針』に変化はないと認識している」という答弁書を閣議決定した(3月22日)。共産党は今でも破壊活動防止法の調査対象団体であり、「共産党が(合法化した)1945年以降、国内で暴力主義的破壊活動を行った疑いがある」と記したという。

 当然ながら、共産党はこれに対して強く反発した。


とあるが、鈴木議員の質問中のこれに関連する箇所は、

四 昭和五十七年四月二十日、第九十六回国会、衆議院地方行政委員会に於いて、警察庁は「ただいまお尋ねの日本共産党につきましては、民青を含めまして、いわゆる敵の出方論に立ちました暴力革命の方針を捨て切っていないと私ども判断しておりますので、警察としましては、警察法に規定されます「公共の安全と秩序を維持する」そういう責務を果たす観点から、日本共産党の動向について重大な関心を払っている」旨答弁されているが、現在も警察庁は、日本共産党は暴力革命の方針を捨て切っていないと認識されているか、見解を求める。

五 昭和二十年八月十五日以後、いわゆる戦後、日本共産党が合法政党となって以降、日本共産党及び関連団体が、日本国内に於いて暴力主義的破壊活動を行った事案があるか確認を求める。(太字は引用者による)


であり、これに対する政府の答弁は、

四について
 警察庁としては、現在においても、御指摘の日本共産党の「いわゆる敵の出方論」に立った「暴力革命の方針」に変更はないものと認識している。

五について
 お尋ねのうち、「関連団体」については、その具体的な範囲が必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難であるが、政府としては、日本共産党が、昭和二十年八月十五日以降、日本国内において暴力主義的破壊活動を行った疑いがあるものと認識している。


であるから、四については、従来からの政府見解に変更はないと述べているだけで、「今の共産党が「破壊活動」を行って虎視眈々と「暴力革命」を狙っている」などとは述べていない。
 また、五についても、共産党がかつて暴力主義的破壊活動を行ったことは歴史的事実ではないのだろうか。
 
 小林教授の記事には、

ネガティブ・キャンペーン?

 多くの平和志向の市民たちが安保法「成立」の後で野党共闘の成立を願ったにもかかわらず、民主党―民進党は共産党との連携に消極的で、支持率も上がらなかったから、共産党が「他の野党が国民連合政権構想に同意しないなら独自候補を擁立する」というスタンスをとれば、幅広い野党共闘は実現せず、参院選(ないし衆参同日選)は与党が大勝することになっただろう。

 ところが、驚いたことに共産党は自主的に独自候補擁立を止めて野党統一候補の実現に努めたので、参院一人区でも野党統一候補が勝利する可能性が生じてきた。

 自民党はこれに警戒感を強めており、この時期にあえてこのような異例の閣議決定を行ったのは、共産党に対するネガティブ・キャンペーンの一環だろうとも言われている。


ともあるが、政府がこの答弁書を閣議決定したのは、鈴木貴子衆議院議員から質問主意書の提出があったからだ。
 議員からの質問に対して、従来からの政府見解に変更がなければ、その旨を答弁するのは当然であり、政府の義務でもあろう。何が「異例」で「ネガティブ・キャンペーン」なのか私にはわからない。

 小林教授が、鈴木議員も政府答弁書も述べていない「今の共産党が「破壊活動」を行って虎視眈々と「暴力革命」を狙っているなど」という主張を勝手に「想像」して、それを「妄想だと一蹴」するのは自由だが、政府答弁書の内容がおかしい、共産党が破防法の調査対象団体とされているのは不当であると言うのなら、まずはその理由を具体的に説明すべきではないのだろうか。
 共産党がかつて暴力主義的破壊活動を行ったこと、現在でも暴力革命を否定していないこと、民主集中制をとり続けている以上指導部が暴力革命の方針に転じれば下部組織はそれに無条件で従うようになっていることは、私が前回までの一連の記事で述べたとおりである。
 例えば、現在の共産党はもはや暴力革命とは無縁であるというなら、共産党が綱領や規約のどこでそんなことを述べているのか挙げてもらいたいものだ。

 私は、ネットで多用されるこの「印象操作」という語が嫌いである。定義がよくわからないし、何も「操作」などしていない、単なる主張自体を批判する際にも用いられることがあるからだ。
 しかし、政府答弁書のどこがどうおかしいのかを具体的に指摘せず、共産党がかつて暴力主義的破壊活動を行ったことや現在でも暴力革命を否定していないことに触れずに、選挙目当てのネガティブ・キャンペーンの一環であると断じるこの小林教授の記事の方が、「印象操作」の名にふさわしいのではないかとの読後感を持った。


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1 コメント

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RONZAの「印象操作」に、一役買う小林教授 (山路 敬介(宮古))
2016-05-18 14:30:27
小林教授が自論を確かなスジの通ったものにする為には、鈴木貴子氏が質問趣意書を発出するまでの経緯を論じなければ、話しにならない。
そこで必ずしも自民党と鈴木親娘が共謀した事実が提示出来ないまでも、納得が行くような状況証拠を複数並べてみることくらいはしないと、小林教授のいう結論には結びつかないし、読む人も得心しないだろう。
なにより読者は、「大学教授」らしくない論理性の欠如を感じる事になる。

思うに、小林教授は鈴木宗男氏をあまり良く知らないのだろう。
鈴木氏はアイヌの人権問題や、沖縄民族を国連で先住民認定させるために力を発揮したが、一貫して反共産党なのである。
北教組(日教組)とはいいが、全教祖(共産党系)とは、水と油だ。
また、解放同盟とも常に良好な関係だ。
一般に「貴子氏の将来を見据えて自民党にすりよった」、という見方も出来なくはないが、それもどうか。

鈴木氏が民主党を離れた理由の多くの部分は、盟友である輿石東氏の党内での影響力が低下したからで、輿石氏に力があれば当然の事、共産党と共闘するなどという陰惨な結果には至らなかった。
共産党というものは一体何か、正確に理解している鈴木氏には当時の民主党執行部の定見のなさが我慢出来なかったのである。

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