7月30日にYOMIURI ONLINEが次のように報じたのを読んで、ンン??と思った。
「落ち着いた世論の上に成し遂げるべき」なのはそのとおりだろうが、何故ナチス?
そもそもナチス憲法って何だ? そんなのあったか? いや、ナチスは独自の憲法を制定してはいない。
ナチス政権の下でもワイマール憲法は存続したが、全権委任法の成立によって事実上無効化したのではなかったか?
そして、ナチスは議会の過半数を占めてはいなかったから、国会議事堂放火事件を機に暴力を用いて反対派議員を取り締まり(共産党は非合法化された)、あるいは圧力をかけて全権委任法に賛成させたのではなかったか? 決して国民が「納得して変わっ」たのではない。
東京新聞のサイトが31日に報じた発言要旨は、次のようになっている。
ここには「ナチス憲法」という言葉はない。
読売記者が発言を要約した中での造語かもしれない。
なお、同じ講演を取り上げたと思われる朝日新聞デジタルの29日付の記事は、
と、「ナチス」の語には触れていない。この講演を主催した国家基本問題研究所のホームページに掲載されている産経新聞の記事にも、「ナチス」の語はない。
重要な箇所とは見なされなかったからだろう。
「護憲と叫んで平和がくると思ったら大間違い」
全くそのとおり。改憲と叫んだら戦争が来ると思うのも大間違い。
「改憲の目的は国家の安定と安寧」
これもそうだろう。何も明治憲法や軍国主義に戻そうとしているのではない。
麻生の講演の趣旨は、改憲が明治憲法への復古や軍国主義への回帰であるかのような、実態からかけ離れた感情的で大げさな反対論を唱えるのではなく、冷静に議論されるべきだということだろう。それに異論はない。
ワイマール憲法の下でヒトラーが出てきたという点は私も以前の記事で少し指摘した(コメント欄でさらに補足)。憲法がいかに優れていてもそれだけでは独裁者の登場を防ぐことはできない。
だが、そうした麻生の講演の文脈の中で、
などという発言が何故出てくるのか、まるで理解できない。
ヒトラーの登場を否定的にとらえながら、何故「あの手口を学んだら」となるのか。
反対派を暴力的に排除した上での「静か」な変化を望んでいるのかと誤解されかねない。
思うに、麻生はナチスの独裁確立やワイマール憲法の末路について、あまりよく理解していないか、誤って理解しているのではないか。
麻生の舌禍は今に始まったことではないが、重要な立場にある方は、どんな場であれ、よく知らないことは不用意に語らない方がよい。
既に韓国メディアは批判している。欧米に波及する前に、速やかに取り消すべきではないだろうか。
わが国の副総理兼財務相がネオナチだったなどと報じられても、いいことは何一つない。
(関連拙記事)
ナチスはいかにして権力を獲得したか――麻生発言に思う(2)
歪曲しているのはどちらか――櫻井よしこの麻生発言評と朝日批判を読んで
ナチスの手口学んだら…憲法改正で麻生氏講演
麻生副総理は29日、都内で開かれた講演会で憲法改正について、「狂騒、狂乱の中で決めてほしくない。落ち着いた世論の上に成し遂げるべきものだ」と述べた。
その上で、ドイツでかつて、最も民主的と言われたワイマール憲法下でヒトラー政権が誕生したことを挙げ、「ワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた。あの手口を学んだらどうか。(国民が)騒がないで、納得して変わっている。喧騒けんそうの中で決めないでほしい」と語った。
「落ち着いた世論の上に成し遂げるべき」なのはそのとおりだろうが、何故ナチス?
そもそもナチス憲法って何だ? そんなのあったか? いや、ナチスは独自の憲法を制定してはいない。
ナチス政権の下でもワイマール憲法は存続したが、全権委任法の成立によって事実上無効化したのではなかったか?
そして、ナチスは議会の過半数を占めてはいなかったから、国会議事堂放火事件を機に暴力を用いて反対派議員を取り締まり(共産党は非合法化された)、あるいは圧力をかけて全権委任法に賛成させたのではなかったか? 決して国民が「納得して変わっ」たのではない。
東京新聞のサイトが31日に報じた発言要旨は、次のようになっている。
麻生太郎副総理兼財務相の二十九日の講演における発言要旨は次の通り。
日本が今置かれている国際情勢は、憲法ができたころとはまったく違う。護憲と叫んで平和がくると思ったら大間違いだ。改憲の目的は国家の安定と安寧だ。改憲は単なる手段だ。騒々しい中で決めてほしくない。落ち着いて、われわれを取り巻く環境は何なのか、状況をよく見た世論の上に憲法改正は成し遂げられるべきだ。そうしないと間違ったものになりかねない。
ドイツのヒトラーは、ワイマール憲法という当時ヨーロッパで最も進んだ憲法(の下)で出てきた。憲法が良くてもそういったことはありうる。
憲法の話を狂騒の中でやってほしくない。靖国神社の話にしても静かに参拝すべきだ。国のために命を投げ出してくれた人に敬意と感謝の念を払わない方がおかしい。静かにお参りすればいい。何も戦争に負けた日だけに行くことはない。
「静かにやろうや」ということで、ワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。誰も気がつかない間に変わった。あの手口を学んだらどうか。僕は民主主義を否定するつもりもまったくない。しかし、けん騒の中で決めないでほしい。
ここには「ナチス憲法」という言葉はない。
読売記者が発言を要約した中での造語かもしれない。
なお、同じ講演を取り上げたと思われる朝日新聞デジタルの29日付の記事は、
「護憲と叫べば平和が来るなんて大間違い」麻生副総理
■麻生太郎副総理
日本の置かれている国際情勢は(現行憲法ができたころと)まったく違う。護憲、護憲と叫んでいれば平和がくると思うのは大間違いだし、仮に改憲できたとしても、それで世の中すべて円満になるというのも全然違う。改憲の目的は国家の安全や国家の安寧。改憲は単なる手段なのです。狂騒・狂乱の騒々しい中で決めてほしくない。落ち着いて、我々を取り巻く環境は何なのか、状況をよく見た世論の上に憲法改正は成し遂げるべきなんです。そうしないと間違ったものになりかねない。(東京都内で開かれたシンポジウムで)
と、「ナチス」の語には触れていない。この講演を主催した国家基本問題研究所のホームページに掲載されている産経新聞の記事にも、「ナチス」の語はない。
重要な箇所とは見なされなかったからだろう。
「護憲と叫んで平和がくると思ったら大間違い」
全くそのとおり。改憲と叫んだら戦争が来ると思うのも大間違い。
「改憲の目的は国家の安定と安寧」
これもそうだろう。何も明治憲法や軍国主義に戻そうとしているのではない。
麻生の講演の趣旨は、改憲が明治憲法への復古や軍国主義への回帰であるかのような、実態からかけ離れた感情的で大げさな反対論を唱えるのではなく、冷静に議論されるべきだということだろう。それに異論はない。
ワイマール憲法の下でヒトラーが出てきたという点は私も以前の記事で少し指摘した(コメント欄でさらに補足)。憲法がいかに優れていてもそれだけでは独裁者の登場を防ぐことはできない。
だが、そうした麻生の講演の文脈の中で、
「静かにやろうや」ということで、ワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。誰も気がつかない間に変わった。あの手口を学んだらどうか。
などという発言が何故出てくるのか、まるで理解できない。
ヒトラーの登場を否定的にとらえながら、何故「あの手口を学んだら」となるのか。
反対派を暴力的に排除した上での「静か」な変化を望んでいるのかと誤解されかねない。
思うに、麻生はナチスの独裁確立やワイマール憲法の末路について、あまりよく理解していないか、誤って理解しているのではないか。
麻生の舌禍は今に始まったことではないが、重要な立場にある方は、どんな場であれ、よく知らないことは不用意に語らない方がよい。
既に韓国メディアは批判している。欧米に波及する前に、速やかに取り消すべきではないだろうか。
わが国の副総理兼財務相がネオナチだったなどと報じられても、いいことは何一つない。
(関連拙記事)
ナチスはいかにして権力を獲得したか――麻生発言に思う(2)
歪曲しているのはどちらか――櫻井よしこの麻生発言評と朝日批判を読んで
一々細かい解説というか背景説明をしながらやらないといけないのは立場上しかたないとは思いますが、難儀ですねー。
丁寧に活字にしている人がいてくれています。
http://hamusoku.com/archives/7988349.html
副総理は全く逆のことを言っています。
恣意的に文字を切り取ったメディアの手口です。
筆者のご指摘のように文脈がつながらないのは恣意的に切り取られているからです。
ご注意を。
問題は後半の「いつのときからか、騒ぎになった。」以降。
麻生氏が、自民党員に、
改憲を民意に反して実現させるための手口を教えている場面
にしか見えない。
「いつのときからか、騒ぎになった。騒がれたら、中国も騒がざるをえない。韓国も騒ぎますよ。
静かにやろうやと。
憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。
だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね。」
と言った後の
「(改憲を)喧噪のなかで決めてほしくない」
を自然に解釈すれば、
改憲を民意に反して実現させるためには、
数の力でごり押しするやり方だと喧噪が起きて失敗するので、
静かに行って国民に感付かれないようこっそり変えるやり方の方がいい
という意味になります。
自分達のやろうとしてるやり方が、
ナチスが自国の憲法をナチス憲法に改悪したときと同じやり方
だと明言したのだから、
やろうとしてることも、
日本が自国の憲法をナチス憲法に改悪すること
だと誰だって思います。
それとも、
やり方だけ、ナチス憲法に改悪したときと同じやり方だけど、
やることは、民意を反映した形に改善することだ
とでも言うのでしょうか?
もし、そうなら、
麻生氏は、ユダヤ系人権団体に、堂々と、そう説明すればいい。
ユダヤ系人権団体が要求しているのは、
撤回や謝罪ではなく、真意の回答です。
麻生氏には、謝罪なんかどうでもいいから、真意を答えてもらわないといけない。
曖昧な答え方で誤魔化すのを許さず正確に答えてもらわないといけない。
「学んだらどうかね」とは誰に向かって言ってるのか?
「手口」とは、具体的に、どんな妨害を回避するために何をすることなのか?
ちゃんと答えてほしい。
「真意が伝わっていない」と抽象的に言われてもわからない。
ネットで真意はこうだと言って擁護してる人がうじゃうじゃいるけど、
麻生氏本人に言ってもらわないと、本当はどうなのかずっとわからないまま。
頭が廻りすぎるのではなく、適当なことを言っただけにしか見えません。
朝日の記事をコピペしただけではないですかね。
>副総理は全く逆のことを言っています。
>恣意的に文字を切り取ったメディアの手口です。
>筆者のご指摘のように文脈がつながらないのは恣意的に切り取られているからです。
そうでもないと思いますよ。全文を読んでも文脈はつながりません。
人間、文脈がつながらないことを口にすることもあります。麻生氏に限ってそんなことは有り得ないと思えるのか、文脈から外れた独自の解釈を繰り広げて、マスコミは恣意的に報じている、日本語が理解できないなどと批判する人がいますが、いったいどちらがそうなのかと思います。