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日々の思いをたまに綴るブログ。

米国の対ドイツ参戦は「狂気」か

2011-12-16 01:15:51 | 大東亜戦争
 前回の記事でも紹介したが、フーバー元米大統領がルーズベルトを「対ドイツ参戦の口実として、日本を対米戦争に追い込む陰謀を図った『狂気の男』」と批判していたことが明らかになったと産経新聞が報じている。

 ルーズベルトが真実そのような意図の下に対日政策をとっていたかどうかはさておき、それではフーバーは、米国はドイツと戦うべきではなかったと考えていたことになる。
 米国がドイツに直接攻められているわけでもないのに、わざわざ日本を追い込むことによりドイツとの戦端を開き、多数の国民を犠牲にするなど狂気の沙汰であったと。

 20世紀初めまでの米国の伝統であったモンロー主義に基づく考え方だろう。

 だが、果たしてこれは妥当なのだろうか。

 第二次世界大戦の大まかな動きは広く知られているだろうが、念のため、初期の経過を示しておく。

1939.9 ドイツがポーランドに侵攻。英仏、ドイツに宣戦。ソ連もポーランドに侵攻しドイツと分割。
1939.9~10 ソ連がバルト3国に進駐(40年併合)
1939.11~40.3 ソ連・フィンランド戦争(フィンランドの領土の一部をソ連に割譲)
1940.4 ドイツ、中立国であるデンマーク、ノルウェーに侵攻
1940.5 ドイツ、中立国であるベルギー、オランダに侵攻
1940.6 フランス、ドイツに降伏
1940.6 ルーマニア、領土の一部をソ連に割譲
1941.4 ドイツ、ユーゴスラビア、ギリシャに侵攻。ハンガリー、枢軸側につく
1941.6 枢軸軍、バルカン半島を制圧
1941.6 枢軸軍、ソ連に侵攻

 スペイン、ポルトガル、スイス、スウェーデンなどの一部の中立国を除いて、ヨーロッパの大陸部はほぼ枢軸側の制圧下にあった。
 また、スペインとポルトガルも枢軸側に近い独裁体制であった。
 
 仮に米国が参戦しなければ、英国は事実上ただ一国でドイツをはじめとする枢軸諸国と戦い続けなければならなかったことになる。
 その結果、英国が敗北したかどうかはわからない。しかし、少なくとも史実のように大陸に反攻するのは容易なことではなかっただろう。
 幸い、ヒトラーが不可侵条約を破ってソ連へ侵攻したものの敗退し、さらに米国の参戦もあってドイツは二正面作戦を戦うことになり、消耗の末敗れた。
 しかし、ヒトラーがそんな気を起こさなければ、スターリンにはドイツに事を仕掛ける意志はなかったのであるから、ファシズムと共産主義の両陣営が仲良く平和共存するという事態になっていたかもしれない。
 そんな事態が長期にわたって続けば、英国はもちろん、米国とて無事では済まなかったかもしれない。

 もし、米国がドイツと戦わなければ世界はどうなっていたかと思うと、身の毛がよだつ。

 産経新聞の佐々木類記者は、解説記事で、

 フーバーは真珠湾攻撃後、表向き対日戦勝利に向けた米国の結束を強調したが、親しい周囲には米国の対独参戦を実現するため、日本を挑発したルーズベルトのやり方を強く批判していた。フーバーは「ルーズベルトは日本人の心理が分からなかった。彼のやったことは、歴史がきちんと公正に評価するだろう」とメモ帳にしたためている。

 こうした事実からは、政敵を批判するという、ルーズベルトに対する個人的な感情を差し引いても、選挙に大敗するまで政権中枢にいたフーバーが、ルーズベルト政権が持つ潜在的な危うさと、対日政策のいかがわしさに気づいていたことがうかがわれる。


と説くが、何を根拠にそんなことが言えるのかさっぱりわからない(フーバーがルーズベルトによる日本への挑発を批判していたとしても、それがル政権の「潜在的な危うさ」=ソ連のスパイの浸透や、対日政策の「いかがわしさ」に気付いていた根拠には全くならない)し、ル政権批判を強調したいあまりに、もっと大切なことを見失っているように思える。

 「ルーズベルトは日本人の心理が分からなかった」という言葉にしても、どういう意味で発せられたのだろうか。前回紹介した佐々木記者の記事によると、フーバーは、ルーズベルトは対独戦参戦の口実としてわが国を対米戦争に引きずり込もうと経済制裁を加えたというのだから、実際にわが国が対米戦に踏み切ったことからすると、むしろ「日本人の心理を分かっていた」となるはずではないのか。

 ちなみに、日独伊三国同盟は、いずれか一国が「現ニ欧州戦争又ハ日支紛争ニ参入シ居ラサル一国ニ依テ攻撃セラレタルトキハ三国ハ有ラユル政治的、経済的及軍事的方法ニ依り相互ニ援助スヘキコトヲ約ス」と定めている。
 「攻撃セラレタルトキ」であるから、こちら側から攻撃した時は、相互援助の対象とはならない。
 したがって、わが国から米国に攻撃を加えても、それだけではドイツと米国は交戦状態にはならない。
 史実では、わが国の対米宣戦に伴い、ドイツも米国に宣戦した。そのため米国はドイツと戦火を交えることができた。だが、それはヒトラーがたまたまそう判断したからにすぎない。
 そんな不確定要素を有している点で、裏木戸参戦説というのは、既に破綻しているのである。


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