トラッシュボックス

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ある民主党批判のFlashについて

2007-07-21 22:42:44 | ブログ見聞録
 zombiepart6さんのブログ「ギロニズムの地平へ」で、民主党の沖縄政策を批判するFlashの話を知る。
 そのFlash内では、民主党が「主権の委譲」(沖縄の?)を主張しているという。zombiepart6さんは、この箇所について、売国的であり、常軌を逸していると強く批判している。

 zombiepart6さんが見たのは、naojuvさんという方の「徒然日記」というこちらのブログの記事
 この記事は、れおんさんという方の「My favorite ~Osaka Japan~Eat!!! 」から転載されたもの。
 れおんさんは「御意見番日記」というブログを開いているduneさんという方からこのFlashを紹介されたそうだ。
 duneさんがこのFlashをどこで知ったのかは不明。

 で、私もこのFlashを見てみた(長くて辛かった・・・・・・)が・・・・・・これは、悪質なネガティヴキャンペーンではないのかな。

 Flashの内容は概略次のようなもの。

1.沖縄は今危機に瀕している。沖縄が日本ではなくなろうとしている。
2.民主党は、2005年8月に発表した「沖縄ビジョン」で、
・軍事基地を減らすとともに、基地経済への依存からの脱却を図る
・一国二制度を導入し、東アジアの一拠点をなることを目指す
ことをうたっている。
 しかし、沖縄は中国の軍事的脅威にさらされており、基地を減らすべき状況にはない。
 また、一国二制度は中国が香港返還に際して適用したもので、その結果、香港の自治権は消滅してしまった。
3.「沖縄ビジョン」にはほかにも、以下のような刺激的な主張が見られる。
・地域通貨の発行
・長期滞在中心の「3千万人ステイ構想」
・ビザの免除による東アジアとの人的交流の促進
・中国語などの学習
・無国籍児など多様化している国際児の教育を受ける権利
・安全保障等で沖縄があらためて自主自立の新たな道を開くこと
 ――これらはいずれも、中国人を沖縄に大量に移民させ、やがて沖縄を併呑するという中国の意図にのっとったものである。
4.民主党は、2004年6月に発表した「憲法提言中間報告書」で、「国家主権の移譲」をとなえている。
 これは、日本国の統治そのものを他国に移管し、これを譲渡することであり、すなわち日本の解体であり、亡国的所業である。
 「民主党の最終目標が日本の解体」であるなら、上記の沖縄政策も首肯できる。
 民主党は中国の傀儡政党として、ひとまず沖縄を中国に「献上」しようとしている。そして次の狙いは・・・・・・。

 ツッコミどころはいろいろあるのだが、とりあえずzombiepart6さんが問題視していた「国家主権の移譲」についてだが、民主党のホームページで「憲法提言中間報告書」の本文を見てみると、要は、地球市民主義を背景に、EUのような組織への移譲が想定されていることがわかる。

 「主権の移譲」について触れられているのは、次の5箇所。

《そして、これらの紛争形態の変化、大きな価値転換や構造変動に伴って、これまで絶対的な存在と見られてきた国家主権や国民概念も着実に変容し始めている。EUでは、「国家主権の移譲」や「主権の共有」が歴史を動かしている。
〔中略〕
 こうした大きな眺望の下に立つとき、いま私たちが試みなければならない憲法論議の質が、懐古的な改憲論や守旧的な護憲論にとどまるものでないことは明らかである。いま必要なのは、こうした歴史の大転換に応えて<前に向かって>歩み出す勇気と、日本が国際社会の先陣を切る決意で、21世紀の新時代のモデルとなる、新たなタイプの憲法を構想するく地球市民的想像力>である。》

《そもそも、近代憲法は、国民国家創設の時代の、国家独立と国民形成のシンボルとして生まれたものである。それらに共通するものは、国家主権の絶対性であり、国家による戦争の正当化であった。これに対して、戦後日本が制定した日本国憲法は、国連を軸とした国際秩序に信を寄せて立国の基本を定めたという点で画期的なものであり、国家主権それ自体を相対化する試みとして実に注目すべき内実を備えている。
 21世紀の新しいタイプの憲法は、この主権の縮減、主権の抑制と共有化という、「主権の相対化」の歴史の流れをさらに確実なものとし、これに向けて邁進する国家の基本法として構想されるべきである。国家のあり方が求められているのであって、それは例えば、ヨーロッパ連合の壮大な実験のように、「国家主権の移譲」あるいは「主権の共有」という新しい姿を提起している。》

《5.国民投票制度の検討
日本でも、例えば、主権の移譲を伴う国際機構への参加などの場合について、国民の意思を直接問うことができる国民投票制度の拡充を図るべきである。そのための手続きや効力について詳細な検討を行い、細かく規定していくことが重要である。》

《9.硬性憲法と憲法改正手続き
硬性憲法の実質を維持しつつ、より柔軟な改正を可能とするために、現憲法の改正手続きそのものを改正する必要がある。例えば、<1>憲法改正の発議権は国会議員にあると明記する、<2>その上で、各議院の総議員数の過半数によって改正の発議を可能にする、<3>改正事項によっては、各議院の3分の2以上の賛成があれば、国民投票を経ずとも憲法改正を可能とする、<4>ただし、主権の移譲など重要な改正案件に限定して国民投票を義務付け、その場合、有効投票の過半数の賛成を条件とする、など改正手続きを見直す。》

《一方で、古いタイプの脅威と国家間紛争に代わって、新しいタイプの脅威が地球規模で覆いつつあり、これに対応しうる新たな安全保障と国際協調主義の確立が求められている。私たちは、これまでの日米関係一辺倒の外交と安全保障政策を脱して、2l世紀の新時代にふさわしい、「アジアの中の日本」の実現に向かって歩み出すべき時を迎えている。また、国際協調主義の立場に立ち、国連中心の国際秩序の形成に向け積極的な役割を果たしていくべきである。そのためには、例えば、EUの発展過程に見られるような「主権の移譲」もしくは「主権の共有」を含めた、よりグローバルな視点からの憲法の組み直しにもあえて挑戦する気概が必要だと感じている。》

 ここで語られている「主権の移譲」が、このFlashが言うような「日本国の統治そのものを他国に移管し、これを譲渡する」ものではないことは明白だ。
 おそらくは、東アジア共同体構想、あるいはもっと進んだ世界政府的なものを想定しているのだろう。

 私は、東アジア共同体構想には反対だし、引用した「憲法提言中間報告書」の主張にも同意しない。国民国家の枠組みは、少なくとも当面は崩すべきではないと考える。現在の東アジアは、EUのような共同体を形成しうる条件を満たしていないと思う。
 しかし、民主党の言う「国家主権の移譲」が、日本の主権の中国への移譲だ、だから民主党は売国政党だという批判は、筋違いというものだろう。
 そしてもちろん、この「憲法提言中間報告書」の「国家主権の移譲」という語句をもって、日本が中国に沖縄を売り渡そうとしている、といった批判も。

 あと、このFlashは、国家主権と国民主権を混同して、参政権が失われるだの何だのと珍妙なことを述べている。じゃあEUの国民には参政権はないのか(笑)。
 もっとも、危機感をあおるために敢えて混同しているだけかもしれないが。

 zombiepart6さんが、「民主主義という制度が与える「権力の正統性」の限界を逸脱した話」で、「「憲法改正」なんかメじゃないくらいの大問題」などと述べているのも理解しがたい。
 民主党の主張は沖縄ではなく、あくまで憲法についてのものであり、移譲の対象は他国ではなく、EU的なものを想定しているのであり、しかも例えば上記のように、

《主権の移譲を伴う国際機構への参加などの場合について、国民の意思を直接問うことができる国民投票制度の拡充を図るべきである。》

と、国民主権をないがしろにしているわけではないのだから。
 Flashだけで判断したのかもしれないが、それにしても「根本的な反民主主義組織」とは言い過ぎだろう。

 このFlashには、ほかにも問題点が多い。
 一国二制度により香港は中国に自治権を奪われたというが、沖縄を一国二制度にすれば、中国に相当するのは日本なのだから、日本の主権が沖縄にあることに変わりはないわけで、何が問題なのか。香港が中国に吸収されたように、沖縄も中国に吸収されるというイメージを与えたいのだろうが、いささか混乱が過ぎるのではないか。
 「3千万人ステイ構想」にしても、中国人3000万人がやってくるかのようにあおっているが、「沖縄ビジョン」では、

《従来の大量輸送・大量消費型マスツーリズムといった環境面に負荷がかかる観光形態ではなく、自律的な持続可能な観光へと転換すると共に、アジアからの外国人を含む国際型観光地および長期滞在中心の観光地への転換を図り、各種コンベンションなどを通して観光客のみならずビジネスマンや学生等も含め幅広い年齢層が訪れる「3 千万人ステイ構想」の実現に取り組む。》

と、単に来訪者が3000万人であるというにすぎないし、そもそもこの構想の具体的な中身や、3000万人という数字が何を意味するのか(年間の来訪者数? まさか常時3000万人が沖縄に滞在可能だと考えているわけではないだろう)すら、明らかではない(検索してみたが、見当たりませんでした)。
 「ビザの免除」により中国人がノービザで大量流入するかのように言うが、「沖縄ビジョン」では、

《地理的に近い台湾に対しては観光ビザの免除をするなどの入国管理の適切な運用によって、東アジアの人的交流の拠点を目指す。その一方で、麻薬をはじめとした不法物の沖縄への流入防止に一層努め、安全で健全な沖縄のイメージをアピールする。》

とあるのみで、中国に対するノービザなど想定されていない。 
 「無国籍児など多様化している国際児の教育を受ける権利」にしても、普通に考えれば沖縄におけるその種の問題と考えると思うのだが、このFlashは何故か、中国の無戸籍児2176万人が流入してくるかのように印象づけている。「沖縄ビジョン」では、

《アメラジアン※18)だけでなく、無国籍児など多様化している国際児の教育を受ける権利の確立のため、公的助成を含めた教育環境の整備、及び養育費を確保するための米国との協定締結等の措置の実現を図る。

※18)アメラジアンとはAmerican と Asian の造語。アメリカ人とアジア人を両親にもつ子ども。特に日本では沖縄においてアメリカ軍人および軍属と日本人女性との間に生まれた二重国籍児を指す。》

と述べられている。これを中国の無戸籍児流入に結びつけるとは、曲解にもほどがあるというものだ。
 
 このFlash、端的に言って、まともに取り上げるに値しない、悪質なデマ攻勢としか思えない。
 私は、こういうやり方は嫌いだ。

 このFlashに見られる主張は、既に「沖縄ビジョン」発表当時からネットで話題になっていたらしい。それが、今回の選挙に際して、復活したということなのだろう。

 ところで、このFlashを取り上げていた、れおんさんの「My favorite ~Osaka Japan~Eat!!! 」は、《民主党、「シナの生活が第一!」 》という記事で、小沢・鳩山・菅トリオのバックに毛沢東を配置する画像と、民主党議員数名の横に「一〇〇〇万人移民受け入れ構想」という見出しを付けた画像(おそらく、雑誌記事のコラージュなのだろう)を掲載している。ともに、実に不快な印象を受ける。

 以前、「反日ブログ監視所」の篠原静流氏が命名した「嫌安倍厨」のふるまいと、方向性こそ違えど、同質のものだろう。
 その種の輩は左右を問わないと私は思う。

 このれおんさんは、維新政党・新風支持者であるらしい。

 先日、miracleさんのブログで、維新政党・新風支持者のある行動が問題になっていると知ったが、新風の支持者って、たいがいこんなレベルじゃないのかな。