山と道・野の花のこと

揺れずに咲く花がどこにあるだろうか
この世のどんなに美しい花も揺れながら咲くのだ
<ト・ジョンファン>

登頂200回記念 弥彦山の四季(後編)

2011-11-26 | 弥彦山の足跡 1・2月+200回

山頂からの越後平野は

平穏な気候で豊かな実りを願ったり、収穫の喜びなど、
折々の人々の生活が想像できます。
* 
振り返れば佐渡。
佐渡が大きいので、内海のように感じます。
(佐渡は肉眼で識別できるのですが、写真ではよく見えませんね)

水槽の中の水のように穏やかな海の向こうに、
雪を頂く大佐渡山脈・小佐渡山脈が見えると、
1時間強の登りの疲れがふっとび、
今日は得したなと思えるのでした。
200回登って、
くっきり見えるその光景は2回だけしかありません。
残念なことに、
そういう日に限ってカメラを忘れ、
まだ、写真のコレクションには入っていません。
メインルートである
弥彦神社からの表参道を
切り取ってお伝えします。

 夏は山頂手前の道の両側でアジサイが出迎えてくれます。
さすがに、山頂付近は気温が低いため、
平地のアジサイが終っても、
元気な花が咲いています。
アジサイの花は行くたびに、少しずつ色が変わり、
飽きることがありません。
冬、雪が降る前に道側の枝を切って手入れしてあるのですが、

根が張って大きな株になっていますから、
真夏には、人の背よりも高く茂り、
やっとすれ違えるほどの狭い道になります。
ここのアジサイを見ていると、
梅雨時の花というイメージが崩れます。
(写真は撮ったのですが見当たりません)
 *
 秋の紅葉は行くたびに、
そのとき一番美しい木を見つけることが楽しみです。
日の当たらない木は緑のままで、
日の当たる木は赤や黄色に染まり、
錦秋の絶景になります。
見所は5合目から6合目で、
遠く、近くに秋を感じながらゆっくり歩くと癒されます。
残念ながら、写真の技量もないので、
他の皆さんのような美しい写真がなかなか撮れません。

秋の紅葉といえば、
弥彦山のふもとの弥彦公園は新潟県内でも有数のもみじの名所です。
もちろん、
もみじ谷の中で見る紅葉は真っ赤で美しいのですが、
弥彦山の7合目の少し下にある
里見の松の休憩所から見下ろす紅葉のもみじ谷もきれいです。

 標高634mの山でも
雲海
を見ることができます。
夜寒くて風がない日に街が霧に包まれると、
朝食もとらず、あわてて山に向かいます。
小雨の中を登り、だんだん明るくなってきたらチャンスです。
海側の雲が切れると
雲海に覆われた越後平野が見えます。
遠くの県境の山、平野を覆う平らな白い海、
こういう日には登山者も少なく、
静かに絶景を楽しむことができます。
(最初に見た雲海・・・消えかかっている)

 冬は雪が降ってしまえば
足元が悪く、危険が増すので登りません。
代わりに何か運動になるものがあると良いのですが、
屋内のマシーンはあまり好きではないので、
こういうところが雪国のつらさでしょうか。
冬の山を見るのも素敵ですが、
冬の新潟は晴れの日が少ないので、出かけようという気力が・・・
 *
 弥彦山には
1合目から9合目まで、りっぱな石の標柱があります。
どなたかが、千回登頂を記念して贈られたもののようです。

それを見て、すごいと言う人と、
千回も登るなんてよっぽど暇なんだ、
他にもっといい山はあると言う人がいました。
* 
山を登る理由は人それぞれだと思います。
この山は宗教上の聖地でもあり、
願いをかける人もいるのでしょう。
私の場合は、
健康上の理由から、
いつまでも元気でたくさんの山に登りたいので、
トレーニングをしているということでしょうか。
それぞれの思いを受け止めてくれるふるさとの山です。
 写真は、一度に載せることができないので、
改めて、ジャンル別にご紹介します。
深田久弥さんは「日本百名山」の後書きにて、
弥彦山のことを
名山には違いないが絶対的な標高が足りなかったと記しています。
そして、
百名山以外の名山50にも記述があり、
蒲原平野のどこからも見ることのできる
地元で愛され続ける山と紹介しています。
end

登頂200回記念 弥彦山と四季(前編)

2011-11-26 | 弥彦山の足跡 1・2月+200回
弥彦村にある弥彦山を
初めて登ったのは小学生の頃、
両親に連れられて、
下りだけ歩いた記憶があります。
外で弁当を一緒に食べるという時間はけっこうあったのですが、
思い出すと、
なんとなく冬の薪ストーブのような
暖かい気持ちになります。
それから、長い時間が過ぎ、
体重を減らすためのランニングがきつくなって
山歩きに替える時、
近くてちょうど良い高さの山が弥彦山でした。

弥彦神社からの表参道
西生寺からの裏参道
がメインルートです。
*
標高634mは東京スカイツリーと同じ高さです。
米どころの越後平野が一望できます。


1年の始まりは、雪解けとともに始まり、
通常3月から長靴なしで登れます。
しかし、
弥彦山に登り始めてから、1回だけ
元旦に登山した経験があります。
元旦に雪がなく、天気予報が晴れるというのは、
新潟県では10年に1回くらいでしょうか。
* 
元旦の未明に
携帯ライトをつけて、どこからともなく集まって
山頂を目指す光の帯ができます。
何回も登って、勝手知ったる山道なのですが、
登り始めは真っ暗で、
ライトがないと1m先も見えません。
急に思い立って登り始めた準備不足で、
持っていた懐中電灯の明かりが急に暗くなったので、
よほど引き返そうかと思いました。
が、
日の出はまだ先だけれど、
空はもっと早く明るくなるのを思い出し、
先に進むことにしました。
それから、
遠出するときはLEDライトをいつもバッグに入れ、
出発前に電池の残量を点検しています。
ご来光を見に山頂に集まったのは
100人を超えるような善男善女でした。
 長靴登山の地元の方たち

その年の正月は、
母が怪我で入院をして病院で年を越したので、
そういう意味でも、思いで深い年明けでした。
もちろん、母の一日も早い回復をお願いし、
今、母が元気でいることに感謝しております。

ふと、
その年の正月は比較的暖かく、
深夜に登る光の帯や山頂の気温を考えると、
夏の富士登山と似ていると思いました。
最近は雪の量が年によって大きく変動し、
ここ数年は大雪でした。
地球に無理がかかっているのでしょうか。
 *
春になって
花が咲き始めると楽しみが増えます。
四季折々の山野草に名札をつけてくれる人がいて、
少しずつ、花の名前を覚えることができます。
山野草に興味のなかった人にも優しい、
何度も来たくなる山だと思います。

ただ、花の種類は、隣の角田山の方が多いようです。
* 
ふもと近くの野鳥の森の杉林の中に、
あえて杉を植えなかったと思われる一画があり、
そこには背の高い山桜の木が生えています
空から太陽の光に照らされた
桜の花とその空間が淡いピンク色に染まり、
周りの杉の濃い緑の中で、
神々しいものを感じました。
竹林なら、かぐや姫が出てくるような光の集まりです。
写真を撮ってみましたが、
そのイメージはでませんでした。
絵が書ければお伝えできるのかも分かりません。
残念ながら、そういう技量はありません。
(森のこもれび)

万葉集にも歌われた弥彦山
いやひこ(弥彦) おのれかむ(神)さび 青雲の たなびく日すら こさめ(小雨)そぼ降る
(巻16-3883 作者未詳)
弥彦山はおのずから神々しく厳かで
青天に雲が棚引いている日でさえも
小雨がしとしと降ったりする。
* 
古くから、親しみ・敬われた山です。
つづく